進化したAIに殺人は可能か?
新しい作品なので、感想を書きにくいよなぁ。面白すぎて書きたいことが山ほどあるけれど、どうしようかね。
『オリジン』下巻 ダン・ブラウン著という本。
『ロバート・ラングドン』シリーズの最新作で、昨年に出版されてアメリではベストセラーになっている。日本でも今年になって翻訳本が出され、先日のブログで上巻の感想を少しだけ書いた。
科学的な新発見により、世界の宗教家を敵に回してしまったエドモンド・カーシュという40歳の科学者。ラングドンの教え子でもあり、その発表の場に彼も主賓として出席していた。ところが核心に触れようとしたところで、暗殺されてしまう。
その会場は現代美術を展示するスペインの美術館で、館長はアンブラ・ビダルという超、超、超美人な女性。そしてスペイン王子の婚約者でもある。カーシュの意思を継いで研究成果を発表したいラングドンとビダルは、スペイン警察や国王の近衛兵に追われながらも真相を探ろうとする。その脱出には、ウインストンというカーシュの開発したAIが助けてくれた。
まぁ、ここまではいつものパターンと同じ。ところが下巻はとんでもないことになっていく。
この先はネタバレになってしまうので、この本をこれから読みたいと思っている人はここで退避してほしい。
カーシュが用意した映像を公開するためには、パスワードを見つけなくてはいけない。それを探すのはラングドンの得意分野。最終的にはサグラダファミリアまで行って、カーシュのパスワードを発見する。そして映像が公開された。
それは生命の誕生が神によるものではなく、化学的な物質の融合によって発生したというものだった。スーパーコンピューターを使用することで、完璧なシミュレーションをカーシュは完成させていた。
さらに人間の行き着く未来までも予言していた。それは人類と機械の融合というもの。それが人類に代わる新種となって、地球上で進化の再優位を保つというものだった。カーシュは徹底した無神論者で、母を宗教のせいで亡くしている。いわばこれは宗教に対する、彼の復讐でもあった。
ところが最後の最後まで、カーシュを殺した犯人がわからない。宗教家たちはこの事実の公表を恐れていたが、カーシュを殺そうとまでは思っていなかった。ただ謎の宗教組織が関わっているという状況証拠しかない。
まさに物語のラストぎりぎりで、ようやく真犯人が明かされる。それはAIのウィンストンだった!
カーシュはすい臓がんで、余命数日という状態だった。だけど病気で死んだことが世間に知れると、神を糾弾したせいで天罰が下ったと言われてしまう。そこでカーシュは狂信的な宗教家に暗殺させるというシナリオを組んだ。
正確に言えば、AIのウィンストンがカーシュの想いを忖度して、それを具現化させたということ。実行犯を見定め、その人物を操った。そしてカーシュを殺させたというのが真相だった。そのことでカーシュの新発見がより注目を浴びることになる。さらに野蛮な宗教によって、真の科学者が殺害されたという事実も残される。
とにかくよくできたストーリーだった。さすがダン・ブラウンだよね。
いつものお約束どおり、ビダルとラングドンの恋は成立しない。ビダルは婚約者である王子の元へ行ってしまう。やっぱりラングドンは寅さんだよねwww
だけどラングドンらしい考察も見せている。カーシュの発見に感動するものの、だったら生命を生じさせたその化学法則は『誰』が創造したのか? とまで問いかける。それは暗に、神の存在を示唆しているように感じた。
いつか映画化されのかな? トム・ハンクスがおじいさんになる前にクランクインしないと、ヤバイかもねぇ。
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