脳の筋トレは効果抜群!
中年になると肉体の代謝が落ちて、どうしても運動不足になりがち。特に筋肉は適度な負荷を常にかけていないと、あっという間になまってしまう。
幸いなことに神戸は坂道が多い。自宅マンションは山の中腹のようなところにあるので、エントランスに到達するには登山のような坂道を登らざるを得ない。
さすがに真夏はバスに乗るけれど、それ以外の季節はできる限り歩くようにしている。1日置きの買い物で往復すると、歩数は最低でも1万歩近くになる。少し遠回りすれば、1万5千歩くらい歩けてしまう。
そのうえ帰り道は登り坂があるので、かなりいいトレーニングになる。おかげでジムに行かなくても、そこそこ足の筋肉には自信がある。妻もかなり健脚なので、いつも二人で歩いている。
年齢を重ねて代謝が落ちても、筋肉は負荷をかけている限り、あるレベルを維持することができる。高齢になって歩けないとつまらないから、今のうちに足の筋肉をしっかり鍛えておこうと意識している。
これは脳も同じじゃないだろうか?
脳の組織は筋肉とちがうだろうけれど、その性質はよく似ている。使わないとどんどん能力が落ちていく。いつもある程度の負荷をかけていないと、死んでいく脳細胞を補填することができないだろう。
それでボクは脳の筋トレも意識している。常に自分の頭を使って考えることもそのひとつ。それ以外によく使う方法として、難しい本を読むということがある。哲学書や物理学の本なんか、かなり脳の筋トレになる。
なかでもオススメなのが、純文学の小説。それも最近の作品ではなく、ちょっと古めのものがいい。現代ではあまり使われないような語句が多用されている小説なら、なおいいだろう。
そんな筋トレのつもりで、ある小説を読んだ。
『夏の闇』開高健 著という小説。
いやいや、まさに脳の筋トレにぴったりの作品だったwww
開高さんの作品を読んだのは初めてなんだけれど、文体に慣れるまでかなり時間がかかってしまった。文庫本で300ページほどの量なんだけれど、改行が少なくてびっしりと文字が詰まっている。だから読了するまでに3日もかかってしまった。
開高さんはベトナム戦争のとき、従軍記者の経験をされている。そのとき反政府ゲリラの機銃掃射に遭遇されていて、200人のうち生き残ったのが17人という壮絶な経験をされている。
この小説はその体験を基にして書かれたもので、機銃掃射を生き延びたあと、自分を見失った男の様子が全編を通して語られている。ただ食べて眠るだけ。人と会って話すだけで自分が壊れそうになる。ひとたび自分が崩壊すると、身動きが取れなくなってしまう。きっと戦争によるPTSDだろうね。
ある日、学生時代に恋仲だった女とベトナムで会うことになる。彼女も日本を捨てた人間で、海外で博士号を取ろうと奮闘している。二人は一緒に暮らすようになるけれど、男はどうしても普通の生活ができなかった。
二人で夫婦のように暮らすことを女は望むけれど、男はベトナムの戦況が激しくなったことを知って、再び戦地に向かおうとする。自分が人間らしくいられるのは、銃弾が飛び交う戦地だけしかない。それほど彼の心は、戦争という悪魔に心を蝕まれていたという物語だった。
難しい文体だったけれど、慣れてくるとその生々しさに圧倒される。主人公の男が目にしている世界が、肌感覚を伴って伝わってくるようなすごい文章だった。とてもボクには書けない。こうなると、著者の別の作品も読みたくなってきた。
とにかく脳の筋トレは大成功だった。昨日にこの本を読了したあと、心理学関連の本を少しだけ読んだ。その本の内容がシンプルに思えて、どんどん頭に入ってくる。やはり脳の筋トレは、定期的にやっていくほうがいいということだよね。
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