同じ映画を何度も観る理由
作家の浅生鴨さんが、先日にあることをツイートされていた。それは若い人たちの会話。
話題は映画のことで、次にどのような映画を観るかの相談だった。その選択肢に、過去に観た映画が完全に外されているのを知ってショックだと書かれていた。映画の魅力は一度だけでなく、何度か観ることで理解できることが多い。だから映画は一度しか観ないという前提を、とても残念に思っておられたんだと思う。
ボクも浅生さんと同じ意見。つまらない映画は一度で十分だけれど、心を揺さぶるような作品は、観れば観るほどその作品の新しい魅力に気づく。だからボクは気に入った映画を何度も観る。
その理由はいくつもある。初めて観るときは、ストーリーを追いかけるのに意識が忙しい。でも二度目、三度目になってくると、それまで見えていなかったことに気づいてうれしくなる。
部屋の家具に物語のモチーフが隠れていたり、何気ない会話に爆弾のような伏線が張られていることもある。俳優さんの演技も、素晴らしい映画は回数を追うごとに心を動かされることが増えてくる。ちょっとした表情に、その映画のすべてが現れていたりする。
洋画に限るけれど、ボクは英語のヒーリング練習も兼ねている。何度も観ている映画はストーリーを熟知してる。だから極力字幕を見ないで、英語だけで聞き取るようにしている。
そして最大の理由は、物語の構成を勉強すること。小説を書くうえで物語の展開を映画から学んでいる。今日観た映画でその例を紹介してみよう。
『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(原題: Edge of Tomorrow)という2014年のアメリカ映画。きっと7〜8回は観ていると思う。
本音を言うと何度も観る最大の理由は、この写真のエミリー・ブラントの大ファンだから。トム・クルーズも大好きだけれど、この映画のエミリーはカッコ良すぎるほどに素敵なんだよね。
この映画は約2時間。物語の構成を勉強する場合、ボクは時間を測りながらストーリーを分析している。物語で大切なことは、主人公を困らせること。そしてそれを乗り越えて、新しい自分に変わることが必要になる。この映画の場合はトム・クルーズが演じるケイジがその対象になる。
この映画に関していえば、30分単位で展開が変わる。
・スタート〜30分
軍事経験のない報道官であるケイジが、宇宙人との戦争の最前線に送り込まれてしまう。彼にいきなり困難が訪れる。そしてちょうど30分が経過するころ、ケイジに最初の変化が起きる。宇宙人のアルファの血液を浴びることで、何度死んでも記憶を残したまま時間をループできるようになる。
・30分〜1時間
自分の異変に気づくが、まだチキンな報道官でしかない。だけど何度も同じ戦闘を経験するうちに、ループの秘密を教えてくれるリタという女性兵士と知り合う。彼女も同じことを経験していたが、輸血を受けたことでループの能力を失う。この30分でケイジは自分の使命に目覚め、人類を守るための兵士となる。
・1時間〜1時間半
だけど何度トライしても、オメガという宇宙人の本体にたどりつけない。そしてどうしてもリタを死なせてしまう。でもその困難をどうにか乗り越え、ようやくオメガの居場所を突き止める。ところがその過程でケイジは輸血を受けてしまい、ループの能力を失う。彼が迎える最大の危機がやってくる。なぜなら次に死ねばすべてがジ・エンドとなるから。
・1時間半〜エンディング
残りの30分で最後の死闘が行われる。この段階でケイジはすでに過去の彼ではない。屈強な兵士として生まれ変わり、自分の命を捨ててでも人類を守ろうとしている。前線から逃げようようとしたチキンなケイジはもういない。そしてその努力が実り、感動のエンディングを迎える。
というように、ほぼ30分単位で展開が変化するようになっている。このパターンなら観客は飽きないし、物語に惹きつけられていく。映画によって微妙にちがうけれど、主人公に訪れる最大の変化は上映時間の半分くらいで起きることが多い。いくつも分析していると、こんなことが見えてくるんだよね。
ちょっとマニアックかもしれないけれど、こんな映画の見方もあるということ。人生にも分岐点となる瞬間がある。映画はそんな人生の模様を反映しているんだと思う。だから何度も観ることで、シミュレーションをしたくなるんだろうなぁ。
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