貞子の置き手紙
今日は久しぶりに冬らしい1日だった。昨晩から強い季節風が吹いて、今朝起きるとこんな景色が。
六甲山系の頂上付近が雪をいただいていた。かなり寒かったんだね。まるで粉砂糖のようで美味しそうだけれど。
さて人間の記憶のいい加減さを痛感して、なんとも言えない気持ちになっている。
昨日ツイートでもつぶやいたけれど、20年前に読んだ小説を読み直して、その結末にマジで驚いてしまった。知っているはずなのにね。
『らせん』鈴木光司 著という小説。
久しぶりに『リング』の映画を観たのをきっかけに、原作を読み直している。前回に読了した『リング』の感想については、『忘れていた貞子の履歴書』という記事で書いている。
そのときにも書いたとおり、とにかく記憶がぶっ飛んでいる。どうしても映画の記憶のほうが強く残るので、原作の設定に関しては本を読むまで思い出せなかった部分が多い。
この『らせん』も同じで、まるで初めての小説を読む気分だった。そのうえ映画に関しては劇場でみた程度なので、なおさら記憶があいまいだった。だから原作と映画の設定が混ざってしまって、読み終わるまでそれらを分離するのに大変だった。
それでも読み返すと思い出すもんだよね。20年前と同じ衝撃を感じつつも、あぁそうだったよなぁ、と何度も手を打った。
この『リング」シリーズに関しては、映画版『リング』の影響が良きにつけ悪しきにつけ、原作を歪めているように思う。あらためて『らせん』を読んで、ボクの山村貞子に対する印象がすっかり変わってしまった。
井戸から這い出てテレビ画面から登場する彼女の姿は、映画だけのもの。あの印象でこの作品を読むと、貞子のイメージを修正するのに時間がかかる。
『らせん』は『リング』の続編だけれど、貞子の完全勝利で終わる作品になっている。高野舞という映画では中谷美紀さんが演じた人物が、呪いのビデオを見たことでリングウィルスに感染する。そして肉体を持った貞子を一週間で産み落とすという物語。
だから貞子は幽霊ではなく、現実の人間として登場する。睾丸性女性化症候群だった生前の貞子は、今度は子宮を復活させた。つまり完全な両性具有となったので自己増殖できる。『リング』でのビデオはすべて消滅したけれど、そうして突然変異したことで彼女は増殖という目的を果たしたことになる。
そのうえ『リング』での主人公だった浅川の兄がリングウィルスに感染して本を出版したことで、日本中に貞子のDNAが拡散される。もうどうしようもないよね。この事実を思い出して、20年前と同じ衝撃を受けた。
ボクが意外に感動したのは、貞子の置き手紙。主人公の佐藤という医師と肉体関係を持ったあと、彼女が佐藤あてに残したもの。なんか可愛いことをするよねぇ。
そこに書かれている貞子の手紙によると、『リング』でのビデオ事件は彼女の意思を無視したDNAの暴走だったことがわかる。ただ自分という存在を残したいと願っただけだった。なのに気がついたらこうして生まれ変わっていたらしい。そんな人間的な部分に接して、なんだかホッとする気持ちになった。
まぁそれでも、ラストは衝撃的だよね。貞子に協力する見返りに佐藤(映画では佐藤浩市さん)は、海の事故で亡くした3歳の息子を復活させてもらうんだからね。そして貞子と手を組んで佐藤をそこまで動かしたのは、親友の高山竜司(映画では真田広之さん)で、なおかつ『リング」で死んだ彼も復活している。
まぁよくできた物語だよねぇ。DNA好きのボクのツボにハマってしまう。さて、次は『ループ』を読むとしよう。もしかしたら『ループ』は読んでいないかもしれない。なんせボクの記憶はいい加減だからねぇwww
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