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高羽そらさんインタビュー

人間を狂わせる戦地の闇

PTSDという言葉は、以前に比べて正確に認知されているように思う。日本では大きな地震が多いので、震災後のPTSDについて語られることがあるからだろう。

 

アメリカの場合、PTSDといえば戦争によるものが多い。ベトナム戦争から帰還した兵士が、PTSDによって苦しんでいるという話は子供のころに見聞きした。その後も戦争はどこかで起きていて、テロ事件もあとを絶たない。

 

PTSDは兵士だけでなく、テロ被害に遭った人たちも苦しめる。歌手のアリアナ・グランデもライブ中に起きた爆弾テロで、PTSDを発症したことを告白している。

 

その辛さは想像できるけれど、本当の苦しさは本人でないとわからないだろう。でもボクはある映画を観て、兵士のPTSDを間近で観たような衝撃を受けた。

 

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『告発の時』(原題:In the Valley of Elah)という2007年のアメリカ映画。アメリカで実際に起きた事件をもとに、イラク戦争の現実を描いた物語。トミー・リー・ジョーンズとシャーリーズ・セロンが主演している。

 

トミー・リー・ジョーンズが演じるハンクは、息子のマイクが軍から失踪したとの連絡を受ける。マイクはイラクから戻ったばかりだった。ハンクも元軍人で、軍事警察で事件の捜査を行っていた経験がある。

 

胸騒ぎを感じたハンクは、遠く離れた軍施設に向かう。同僚や上官に事情を聞いて回ったが、息子の行方はわからない。だが翌日になってマイクは発見される。46箇所もナイフで刺されたうえ、バラバラにされて焼かれた遺体で見つかった。

 

犯行は軍用地を外れた場所だったので、シャーリーズ・セロンが演じるエミリーという地元警察の刑事が捜査を開始する。ところが軍警察がしゃりしゃり出てきて捜査を妨害する。マイクが麻薬の密売をやっていた可能性があるとのこと。殺された方法が麻薬の売人の手口だったから。

 

このあたりまでは、軍隊の秘密を隠蔽しようとしている雰囲気で映画が進む。『戦火の勇気』や『沈黙の森』というボクが大好きな映画のパターンだった。ところがラストで衝撃の事実が明らかになる。

 

結論から言えば、戦友たちによるケンカが原因だった。でもたかがケンカで、なぜあのような悲惨な殺され方をするのか?

 

それは彼たちが心を病んでいたから。イラクでの悲惨な経験によって、常軌を逸した行動に走ってしまう。ちょっとしたことで激昂して、相手を傷つけようとする。たまたまマイクが殺されたけれど、ちがう状況だったらマイクが加害者になっていた可能性もあった。

 

まじめでおとなしいはずの息子が、戦地での悲惨な経験によって変貌していたことを父親のハンクは思い知らされる。トミー・リー・ジョーンズの素晴らしい演技によって、その心の痛みがストレートに伝わってくる作品だった。

 

イラクにいるとき、マイクは電話で父親にSOSを出していた。「もうやっていけない」と口にした。だけどハンクは「しっかりするんだ」と息子に言うしかできなかった。そのことを後悔する父の想いが、ラストシーンに集積する。マイクが戦地から送った国旗を父が掲揚する場面は、涙なしで見られない。

 

反戦映画はいくつもあるけれど、帰還した兵士の立場に立った作品は少ないかもしれない。戦地から無事に帰っているのに、その狂気から抜け出すことができない。そんな兵士たちのSOSが聞こえてきそうな切ない映画だった。

 

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高羽そら|たかはそら(作家、小説家)プロフィール

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高羽そら(たかはそら)
今後の目標:毎年1つの物語を完成させたいと思います。
生年月日:昭和37年5月10日
血液型:A型
出身地:京都市

【経歴】
1962年京都市生まれ。数年前に生活の拠点を神戸に移してから、体外離脱を経験するようになる。『夢で会える 体外離脱入門』(ハート出版)を2012年1月に出版。『ゼロの物語Ⅰ〜出会い〜』、『ゼロの物語Ⅱ〜7本の剣の守り手〜』、『ゼロの物語Ⅲ〜次元上昇〜』の3部作を、2013年7月〜12月にかけて、オフィスニグンニイバよりAmazonのKindleにて出版。現在も新たな物語を執筆中。

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