犯罪に対する生理的反応
人間の感覚はとても不思議。犯罪者を野放しにしないため、法律というものがある。要するに法律に違反していない犯罪者は存在しない。
加害者でも被害者でもない第三者として犯罪を見た場合、すべての犯罪に嫌悪感や怒りや悲しみを覚えるわけじゃない。悪いことだと理解しつつも、不思議と苦笑して終わるだけの罪もある。
もちろん個人差はある。過去の経験によって、同じ犯罪でも激しく憤る人とそうでない人に分かれることはあるだろう。ボクの場合だったら、動物がらみの犯罪はかなりムカつく。目の前に犯人がいたら、ボコボコにしてしまうだろう。だからそういうニュースは見ないようにしている。
だけど先日話題になった芸能人の大麻使用なんてなんとも思わない。法律に厳格な人のようにけしからんやつだとは思わないし、大麻解放を推進する人のように彼らを擁護する気持ちもない。誰かを傷つけたり殺したりしたわけじゃないから、好きにしたらええんとちゃうのが正直なところ。
相対的に言えば命に関わる犯罪は不快だし、怒りを覚える。そういう意味では誰かを自殺に追い込むようないじめや周囲の人間の傍観は、法律に触れていなくてもボクは卑劣な犯罪だと思う。まぁ、人それぞれだろうけれどね。
実在の犯罪者なんだけれど、とても微笑ましく感じる人物の映画を観た。
『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』という2002年のアメリカ映画。何度も観ているけれど、いつ観ても面白い。脚色されているとしても、これだけの犯罪をやってのけたのは賞賛に値する。
映画を知らない人にために書いておくと、主人公のフランクは16歳で家出をして、詐欺をすることで暮らしていた。小切手の偽造に始まり、パイロットになりすましてジェット機に乗り放題だったり、医者や弁護士にまでなりすましたという人物。
最終的にはFBIのハンラティに逮捕されるけれど、数年のうちに特例で釈放されている。そして政府組織の犯罪捜査アドバイザーとして活躍した。とてもユニークな人生だよね。
ボクがこの映画を好きなのは、フランクが父を溺愛しているところ。レオナルド・ディカプリオが演じるフランクの父を、この写真のクリストファー・ウォーケンが熱演している。
父に喜んでもらおう、愛してもらおうとして、フランクは罪を重ねていく。その部分が切なくて、つい応援したくなる。そして父親の対応もいい。息子が詐欺をやっているのを知っていながら、FBI捜査官を追い返す。むしろ「うまくやれよ」とけしかけているところもある。
トム・ハンクスが演じたハンラティも、どこか愛情があっていんだよね。実際にハンラティとフランクは長い友情関係を継続しているそう。罪だとわかっているけれど、きっとフランクに対して憎めないところがあったんだろうね。
ボクがフランクを応援したくなるのは、誰も傷つけていないし殺していないこと。もちろん詐欺にあった銀行は大きな損害を出しているけれど、おそらく保険にも入っているだろうしね。パイロット、医者、弁護士という立場を利用して誰かを傷つけたことはなく、喜ばせていた部分のほうが強いように思う。
ただボクは映画しか観ていないので、フランクの自伝を読んでみようと思っている。実際にどんな人だったのかとても興味があるから。もしかしたら嫌なやつだと思うかもしれないし、あるいはもっと好きになるかもしれない。どちらにしても天才であることはまちがいない。読むのが楽しみだなぁ。
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