ハジけないと、はじかれる
エンタメ世界においてブレイクするには、もちろんアーティストの才能と努力が必要。だけどそれだけではチャンスは訪れないと思う。
チャンスを呼び込むためには、絶好のタイミングを見定めつつ、自分の才能を生かしてどれだけ効果的にハジけるかだと思う。歌舞伎用語で言えば、カブクことだよね。特にブレイクしているミュージシャンはハジけている人が多い。
ケイティ・ペリーが数日前に新曲をリリースした。彼女のミュージックビデオはいつもハジけている。今回も見事にハジけていた。『Never Really Over』というタイトルの曲。パッと見は普通っぽい内容なんだけれど、じっくり見るとハジけ具合がジワジワとしみてくる。
1970年代を彷彿とさせるサイケデリックな雰囲気で、あの時代を知っている人はハジけているなぁ、と感じるはず。さすがだね。
そしてもうひとりハジけているミュージシャンを紹介しょう。いまもビルボードの上位を突っ走っている『Without Me』という曲がヒット中のホールジー。それは美しいバラードなんだけれど、彼女の新曲がこのヒット曲とちがってぶっ飛んだ作品になっている。『Nightmare』というタイトルで、まさにハジけている。
とにかく映像がすごい。完璧にロックしていて、初めて見たときにノックアウトされた。この曲もかなりヒットしそう。
やっぱりハジけないと、はじかれる。つまり才能があっても周囲の目を気にしてハジけることができないと、人知れず消えていくことになる。
そんなふうにハジけて大衆に無視されながらも、やがてブロードウェイの父と呼ばれるようになった人物の伝記映画を観た。
『ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディー』という1942年のアメリカ映画。ジョージ・M・コーハンという実在の人物を描いたミュージカル作品。ジョージは劇作家、作曲家、作詞家、俳優、歌手、ダンサーをこなし、ブロードウェイを拠点にして全米の賞賛を集めた天才アーティスト。
よく知らない映画なので、なんとなく観た。ところが途中から目を離せない。最後まで画面にかぶりついてしまい、感動の涙を止められなかった。
ジョージの両親も舞台俳優で、全米をどさ回りしていた。やがてジョージと妹を含めた家族4人の舞台が有名になる。ジョージは少年のころから才能を認められ、かなりの自信家だった。そして完全にハジけていた。
だけどそれが理由で、興行主とトラブルを起こしてしまう。彼のせいでこの家族は何度もチャンスを逃し、貧しい生活を強いられるようになる。それでもジョージはハジけることをやめなかった。そしてサムという盟友と出会うことで、とてつもないチャンスをつかむ。
映画の内容はサクセスストーリーであり、時代的な影響で戦意高揚の目的もあった。だけどそんなものはこの映画のテーマの一部でしかない。
この映画を支えているのは4人の家族愛、ジョージの妻であるメアリーの献身、そして親友のサムとの友情物語がメインになっている。だからこそ最後まで感動が消えない。観終わると心が癒されて、とても清々しい気持ちになる。
この映画の監督であるマイケル・カーティスは、同じ時期に『カサブランカ』を撮っている。どうりでこの映画が面白いはず。こんな幸せな気分になるミュージカル映画があったなんて、いままで知らなくて損をした気分になった。
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