国家の危機を救った元女優の作戦
起きることに偶然はなく、すべてが必然である。ボクはそう確信しているし、そのつもりで日々を過ごしている。
ただし偶然が必然になるためには、最低限の条件が必要になる。それはすべてが必然であることを心の底から受け入れること。なるようにしからならないと理解すること。言いかえれば、腹をくくることが必要になる。
本気で腹をくくれないと、いいことが起きても偶然だと思って受け入れることができない。それは成功体験となっていかないので、人生の財産として輝きを持つことがなくなってしまう。
そして悪いことが起きたとき、他人や社会にその責任を押しつけて、自己憐憫の世界に埋没してしまう。そうなると次の一歩が進めず、停滞した人生を無為に過ごすことになるだろう。
グレース・ケリーという有名なハリウッド女優さんがいる。モナコ公国のレーニエ大公と恋に落ちたことで、モナコ公妃になった女性。そんな彼女のモナコでの苦悩と成功を描いた映画を観た。
『グレース・オブ・モナコ モナコ公妃の切り札』という2014年のフランス、イタリア、ベルギー、アメリカの合作映画。グレース・ケリーといえば、世界的な美女として知られている女優。そんな実在の人物を演じたのはニコール・キッドマン。この写真を見れば一目瞭然だけれど、本人に勝るとも劣らない美貌だよね。
モナコ公妃という主人公に、どんなドラマがあるのだろう? ボクはそんな疑問が先に立ったので、あまり期待しないで観た。
ところがそんな予感を、いい意味で裏切ってくれる作品だった。手に汗にぎる展開で、最初から最後までテレビ画面にくぎ付けになってしまった。
モナコ公妃になって3人の子供をもうけたグレースは、夫との疎遠に悲しんでいた。女優時代が懐かしくなり、あのヒッチコックがモナコの宮殿までやってきて新作映画の出演依頼を申し出たことで、女優の復帰を決意する。そしてそのことで夫のレーニエ大公と険悪な状態になってしまう。
1960年当時のモナコ公国は窮地に立っていた。フランスのド・ゴール大統領はアルジェリアとの戦争の費用を捻出するため、モナコ国内にあるフランス企業から税金をとって提供するように脅しをかけていた。そのうえモナコ企業にも課税するように要求してくる。
もし拒否すれば、フランス軍がモナコに侵攻してくるのは確実だった。ド・ゴール大統領はそれが脅しでないことを示すため、フランスとモナコの国境を鉄条網で封鎖してしまう。その背景には恐るべき陰謀があった。
レーニエ大公の姉がド・ゴール大統領に内通することで、大公をモナコから追い出して自分の息子を大公にしようと画策していた。その陰謀に気づいたのがグレースだった。
それまでモナコに馴染めてなかったグレースは、自分の運命を自覚する。ここに嫁いできたのが必然だと感じ、完全に腹をくくる。苦手だったフランス語を学び、モナコのしきたりや礼儀作法を徹底的に身につける。そしてモナコ国民の心をつかむことに成功する。
そしてそれだけでなく、赤十字の活動を通じて、国際社会にモナコの窮状を歌える場をもうける。なんとその場に世界各国の首脳だけでなく、フランスのド・ゴール大統領まで招待するという大胆な計画を実行する。それがこの映画のタイトルになっている、公妃の切り札だった。
そして一世一代の彼女の演説が始まる。このシーンはニコール・キッドマンの素晴らしい演技なしに語れない。結果としてこの演説によって、ド・ゴール大統領はモナコへの侵攻をあきらめ、国境封鎖を解くしかなくなってしまう。
もちろん映画なので、かなり脚色されている。レーニエ大公の人物像等について、グレースの子供たちから抗議があったらしい。まぁ伝記映画ではよくあることだよね。それでも歴史的な事実は変わらない。グレースがモナコの危機を救ったのは事実だろう。
この作品は、ニコール・キッドマンの美貌と演技力なしには完成しなかった映画だと思う。予想をはるかに超えて見応えのある素晴らしい作品だった。
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