観光と環境の板ばさみ
日本にとってこれからの時代、観光が貴重な財源となることは事実。高齢化社会で経済が成熟してしまった日本には、観光立国としての立ち位置を確立することが必要だと思う。
そういう意味では大阪の万博誘致は歓迎すべきことだし、「百舌鳥・古市古墳群」が世界遺産に指定されたことは喜ばしい限り。おそらく大勢の観光客が世界中から訪れてくれるだろうと期待している。
だけど少し気になることがあるのも事実。「百舌鳥・古市古墳群」は文化遺産であると同時に、お墓でもある。仁徳天皇陵に祀られているのが仁徳天皇かどうかはわからないけれど、皇族や豪族のお墓であることはまちがいない。
仁徳天皇陵などは周囲が堀になっているので簡単に侵入できないけれど、不埒な奴がいないとは言い切れない。誰かのお墓に土足で踏み込むようなことが起きないか心配している。そして人間が集まるところにはゴミも集まる。そうした環境問題も気になるところ。
オーストラリアでは、同様の問題に頭を抱えているそう。
アボリジニの聖地「登らないで」の声を無視、禁止前に駆け込み客が殺到
観光地として有名なエアーズロック。世界最大の一枚岩であるこの地が、今年の10月26日から登山が禁止される。それゆえ駆け込み登山をする人で行列ができているそう。この記事の写真を見たら、まさに人間が数珠つなぎになっている。
この地は先住民族であるアボリジニのアナング族にとって聖地とのこと。だから登らないように必死でお願いしているそうだけれど、観光客はまったく耳を貸さない。近くのキャンプ地は人であふれ、トイレの排水管は詰まってそこらにトイレットペーパーや汚物が散らかっているそう。
そして山に登るとトイレがないので、行列に耐えきれず岩の中で用を足す人もいる。この事実を知っただけで、アナング族の人は卒倒してしまうのではないだろうか。非常識にもほどがある。
ただこれまでこの地の登山に関して、アナング族は国立公園の入場料を貴重な収入源としてきた。だから強く言えない部分もあるのだろう。観光によって生計を立てようとすると、環境が破壊されるという板ばさみになってしまう。
最近ではエベレスト登山も問題になっていた。ゴミ問題だけでなく、入山料欲しさに登山者を受け入れすぎて、渋滞するエベレストで亡くなる人が増えている。京都においても、増えすぎた観光客によって市民生活に支障が出ている。
観光と環境の関係は、トレードオフなのかもしれない。環境を維持しようと思えば、人を寄せつけないほうがいい。だけどそれでは現金が入ってこない。このことは世界中の観光地で問題になっていると思う。
国家や自治体として取れる対策は限られているだろう。お金を取るか環境を取るかという、微妙な判断を要求される。とにかく観光客の人たちがマナーを守ってくれるよう、必死で訴えていくしかない。堺市の古墳群が、取り返しのつかないことにならなければいいなと願っている。
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