それでも人生にイエスと言う
ダンス好きの人にオススメのミュージックビデオがある。サム・スミスの新曲で『How Do You Sleep?』というタイトル。
なんとなく陰気な雰囲気だったので、以前のサム・スミスはあまり好きじゃなかった。だけど最近の曲はなかなかボクにフィットしていて、よく聴くようになった。これも美しいメロディの素敵な曲。でもそれ以上にダンスがユニークなので映像に釘付けになってしまう。
LGBTであることをカミングアウトしている彼だけに、ちょっと女性っぽいしぐさが可愛い。彼の場合は女性でも男性でもないことを表明しているから、この曲のダンスにそんな彼の生き様が見えるような気がしている。
多様性を誰もが完全に認める社会はまだやってこないけれど、以前に比べたら寛容になってきたと思う。生きづらく思っている人が、ひとりでも多く笑顔になれる社会になればいいよね。
人生には受け入れ難いことが起きることもある。だけど人間は生きていかなければいけない。ときには心が折れて、自分の人生に絶望することになるかもしれない。でもそんなときは、この本を読んでほしい。きっと前を向くための『何か』を感じてもらえるはず。
『それでも人生にイエスと言う』V・E・フランクル著という本。
タイトルを見ているとスピ系の自己啓発本のように思えるけれど、まったくちがう。この本は精神科医であるフランクルが自分の強烈な体験に基づいて到達したことが記されている。それだけに強い説得力を持っている。
人間は自分の人生に『意味』を求めようとする。人生が価値のあることだと信じたいから、生きている『意味』が欲しい。そしてそれを必死になって周囲に問いかける。
だけどフランクルにすれば、それが人間にとってもっとも愚かなことだと言っている。『意味』を求めようとしても、いつかどこかで見失うことが目に見えている。究極的には人間に与えられた『死』というものによって、すべての『意味』が否定されかねない。
求めても得られないものをつかもうとするから人間は絶望してしまう。だから問いかける立場でなく、自分が答える立場になるべき。フランクルはそう断言している。
つまり社会や現実世界が投げかけてくることに対して、『意味』があるかをあなたが考えて答えなければならない。意味を問うのでなく、自分に起きる出来事に対してその『意味』を答えていくことが人生である。この本に書かれた趣旨はそのことに尽きる。もっと詳しく知りたい人は、ぜひ手にとって読んで欲しい。
彼はこの本の最後でこう述べている。
『人間はあらゆることにもかかわらず───困窮と死にもかかわらず、身体的心理的な病気の苦悩にもかかわらず、また強制収用所の運命の下にあったとしても───人生にイエスと言うことができるのです』
『夜と霧』というタイトルの著作を知っているだろうか? ボクは初めて読んだとき、人間がここまで強くなれることに驚愕した。かなり有名な本なので、タイトルを聞いたことがある人は多いはず。
著者はこのフランクルで、第二次世界大戦のときオーストリアのユダヤ人だった彼は、ナチスによってアウシュビッツに収容されている。95%の人がガス室で殺されるなか、彼は奇跡的に生き残った人間として、精神科医の立場で当時の体験を綴ったのが『夜と霧』という書籍。
そんな彼だからこそ、『それでも人生にイエスと言える』という本を書けたんだと思う。そして、その説得力は半端ない。自分の人生に意味を与えるのは他人でも社会でもなく、自分の想いであり行動であるということ。そのことを教えてもらえる本だった。
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