『悪業の報い』の見本
ある程度の年齢になれば、人間は誰しも後悔を抱えているはず。程度の差はあれど、ああすればよかったと思うことはあるだろう。
その後悔が誰かを傷つけたものであれば、罪悪感にまで成長してしまう。そしてその罪の意識によって、いつか自分は不幸になるんじゃないだろうかとおびえる人だっているかもしれない。自業自得という言葉に、そんな人たちの不安が現れているように思う。
今日観た映画が、まさにその『悪業の報い』をテーマにした作品だった。
『ザ・ギフト』という2015年のアメリカ映画。実によくできた作品で、観ている人の心理が自然に誘導されていく。脚本が素晴らしいと思う。この映画のハラハラドキドキ感を経験してみたいと思う人は、この先のネタバレを読まないほうがいいかも。
サイモンとロビンの夫婦は、シカゴからカリフォルニアに越してきた。シカゴで妻のロビンは妊娠したけれど、流産してしまった。そのときにロビンは精神不安定になり、精神安定剤の薬物依存になってしまった。
それで生活を変えるため、夫のサイモンの故郷である西海岸で暮らすことにした。引越し先のインテリアを購入しているとき、ゴードンという男に偶然出会う。サイモンと高校で同級生だった人物で、この機会に二人は交流を深めようとする。
ところがゴードンの様子がどこか変。電話番号しか教えていないのに手書きのメッセージとワインが自宅に置いてあったり、サイモンが仕事でいないときに限って妻のロビンに会いにくる。新居に池があるのを知ると、夫婦が外出しているあいだ池に鯉が放たれていた。ゴードンからの『ギフト』だった。
ここまで観ていると、ゴードンはかなりやばいヤツに見える。サイモンも妻に何かあったら困るので、ゴードンとの付き合いをやめて家に来ないようにと彼に話す。そうすると翌日には池の鯉が謎の死を遂げ、飼い犬が行方不明になる。悪質なストーカー状態になってきた。
ここでロビンは再び精神が不安定になる。薬の依存が再発してしまった。高校のとき、サイモンとゴードンに何かがあったという気がしてならなかったから。そしてロビンはその事実を突き止める。
ここから180度映画の流れが変わる。被害者だったロビンが、実はクソ野郎だった事実が明らかになる。高校生時代に嘘をつくことで、ゴードンを退学にまで追い込んでいた。陰湿ないじめっ子だった。
ロビンに攻め立てられたことで、サイモンは反省する。薬の過剰摂取で、妻が気絶するという状態だったから。そこでようやく妊娠した妻を安心させるため、ゴードンに和解を持ちかける。ところがここでもサイモンはクソ野郎ぶりを発揮する。謝罪に行っておいて、逆にゴードンを殴り倒す。
無理やり謝罪を受け入れさせるサイモンに対して、ゴードンが答える。「もう手遅れなんだよ」
このセリフが後でじわじわと効いてくる。ロビンが出産間近になったとき、夫の出世は、捏造したデータでライバルを蹴落としたという事実が明らかになる。サイモンは成人してもクソ野郎だった。
出産した妻は夫との別れを決意する。赤ちゃんを連れて病院を出ても、二度とあなたの元に戻らないと宣言する。そのうえ、サイモンは決まっていた出世が取り消されて会社をクビになる。そしてゴードンから最後の『ギフト』が届く。
これがメチャ恐ろしい。送られてきたのは動画だった。ロビンが妊娠前に気絶したのは、ゴードンによる陰謀だった。そして気絶したロビンを寝室に運ぶゴードンの姿が撮影されていた。
ロビンをレイプしたかどうかについて、ゴードンはあえて明言しない。ボカすことでサイモンを苦しめようとする。まさに悪業の報い。
ここで映画が終わる。このあと味の悪さは最高。サイモンのクソ野郎ぶりを散々見ているから、ゴードンを応援したくなる。なんだかすごい映画を観てしまった。
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