テロを防いだ想定外の伏兵
小説を読んだり映画を観ているとき、もっともうれしい瞬間がある。それは予想外の『驚き』が訪れたとき。
昨日読了した小説によって、久しぶりに驚かされた。それはいい意味での『驚き』で、人間を見た目で判断することの愚かさを教えられたような気がする。
『ミスター・メルセデス』下巻 スティーブン・キング著という小説。上巻の感想については『元刑事とサイコパスの心理戦』という記事に書いているので参照を。
ベンツを盗んで8人の人間を殺した殺人犯。名前はブレイディといい、まだ未成年の男性。彼は定年退職した刑事に手紙を書き、自分が事件の犯人であることを告げ、彼を自殺に追い込もうとしていた。
ところが主人公である元刑事のホッジスは、それをきっかけにして自殺願望から抜け出す。さらにブレイディの正体を暴き、逮捕するために彼を挑発する。それが上巻までのストーリー。
怒り狂ったブレイディは、ホッジスの友人である黒人高校生のジェロームをターゲットにする。彼が飼っている愛犬を殺すため、毒入りのハンバーグを用意した。ところがそのハンバーグを、ブレイディのアル中の母親が食べて命を落とす。
母親に対して倒錯的な想いを抱いていたブレイディは、ホッジスを殺すことを決意する。彼は自作した大量のプラスチック爆弾を所有していた。それでホッジスを殺したあと、その街で開催されるコンサート会場で自爆テロを起こすことにした。
ここで悲劇が起きる。ベンツの事件で姉の無念を晴らすためにホッジスに解決を依頼していた女性がいる。ホッジスとも恋仲になった。その女性がホッジスの車を運転したことで爆死してしまう。
そのことによって、ホッジスはブレイディを見つけて殺すことを決意する。その手伝いをしたのはジェロームとホリーという女性。ホリーは爆死した女性の従姉妹だけれど、うつ病を患っていて普通の状態ではなかった。だけど目の前で従姉妹が爆死したことで、その恨みを晴らそうとする。
物語の途中まではちょっとアブナイ存在でしかなかった45歳のホリーが、コンピュータの天才だったことがわかる。どこの誰ともわからないブレイディの正体を見つけたのは彼女の功績であり、複雑なパスワードによって守られていたブレイディのパソコンからテロの場所を見つけたのも彼女だった。
ボクはこの段階で、先ほどのうれしい『驚き』を体験していた。でもホリーの活躍はそれで終わらない。障害者に変装して車椅子に爆弾を積み込んだブレイディをコンサート会場で発見しただけでなく、テロを未然に防いだのもホリーだった!
心の病気で実の母親からもバカ人間扱いされていたホリーが、従姉妹の無念を晴らすために本性をむき出しにする。思わぬ伏兵の登場で、下巻は想像を超えるほどスリリングな展開になった。とにかく、めちゃめちゃ面白い小説だった。
このホッジスを主人公にした小説がシリーズ化されたのは、ホッジスの魅力だけでなくジェロームという若い黒人男性のキャラゆえだろう。そして忘れてならないのは、このホリーという女性。どうやら続編でも、この3人が事件を解決するらしい。
ということで、今日はさっそく図書館で続編を手に入れてきた。またこの3人に会えると思うと、うれしくてワクワクしてくる。
ブログの更新はFacebookページとTwitterで告知しています。フォローしていただけるとうれしいです。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。