創造力の源は自分であること
小説であれ映画であれ、物語を創造するということにボクは強く惹かれる。
誰かのイメージのなかでモヤモヤと湧き出したものが、具体的な形をとって独自の世界を構築していくのが物語。だけどそのやり方は、作家や映画監督によってちがう。そんなクリエイターたちがもがき、葛藤する様子を知ることは、同じ道を志すものにとって貴重な栄養源となる。
今日は、そのような創造に関する滋養を与えてもらえる映画を観た。
『リチャード・リンクレイター 職業:映画監督』(原題:Richard Linklater: Dream Is Destiny)という2016年のアメリカドキュメント映画。映画監督であるリチャード・リンクレイターの半生を追いかけた作品。何気なく観たけれど、めちゃめちゃ面白くて勉強になった。
数多くの作品を残している監督だけれど、ボクがもっとも印象に残っているのは『スクール・オブ・ロック』というコメディ映画。といっても笑うだけでなく、人間にとって必要なものは何かについて、感動を通して教えてもらえる素晴らしい作品。
リチャードは監督としていきなりハリウッドデビューしたわけではなく、『Slacker』というインディーズ作品で名を知られたそう。子供のときの夢は大リーガーになるか小説家になるかだった。
だけど怪我をしたことで野球をあきらめ、練習する時間が浮くことになった。そのときに映画の面白さに出会い、映画を作ることが天職だと感じたらしい。でもそれを実現させてしまうんだから、彼の運命として決められていたものだったんだろうね。
ハリウッドの商業主義に抵抗を感じて、自分独自の道を貫いている。撮影方針も俳優と一緒に作品を創造していくことに主眼を置いているので、このドキュメントでもジャック・ブラックやイーサン・ホークという俳優が彼を絶賛している。他の監督ではあり得ないことを一緒にやっていけるらしい。
ボクが驚いたのはリチャードがこれまでの常識をぶっ壊しているということ。それは彼にとって特別なことではなく、『自分らしさ』を貫いているだけ。そして『自分』であることが、彼の創造力の源なんだと思う。
すごいのが『6才のボクが、大人になるまで』という映画。アメリカの成人といえば18歳だよね。普通の映画なら6才の子役を使って、その後の18才の役は別の俳優を使う。それが常識。
だけどリチャードはちがう。なんと6才の子役が18才になるまで毎年撮影を続けた。だから映画の完成に12年もかかっている。当然ながら少年の父親を演じたイーサン・ホークも、母親を演じたパトリシア・アークエットも12年間続けて撮影に参加している。あまりにすごすぎて、口があんぐりとしてしまった。
イーサン・ホークが言っていた。彼のアイデアは誰でも考えること。だけどそれを本当にやってしまう監督はいない、と。
他の監督ができないのは、常識にとらわれているからだろう。そして映画の宿命である、興行収入というやっかいなものにふりまわされるから。採算を考えると、12年も映画を撮影するなんて無謀でしかない。
だけどリチャードは結果を出し、この映画は数々の賞を受賞している。この映画はぜひとも観なければ。本当に魅力的な監督だと思った。そして、もう一度「『スクール・オブ・ロック』が観たくなってきたなぁ。
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