タイトルに騙されそうになった
昨年に書いた小説を改稿中。それを機にタイトルも見直しているけれど、かなりの難産。タイトルは物語の印象に強く影響する。下手をすれば、タイトルで読んでもられない可能性だってある。
短く、かつ的確に内容を言い表しているものにしたい。これがなかなか苦労する。
これは受け手の立場でも同じで、初めての作品に対してタイトルが占める要素は大きい。特にあまり知らなれいない映画などは、タイトルによってはバッサリと切り捨ててしまうことがある。
先日ある映画のタイトルに閉口した。それで観るのをやめようと思ったけれど、主演している女優さんが大好きな人。それで気を取り直して観たけれど、めちゃくちゃ素敵な映画だった。ヤバい。もう少しでタイトルに騙されるところだった。
『海賊じいちゃんの贈り物』(原題:WHAT WE DID ON OUR HOLIDAY)という2014年のイギリス映画。
誰や、こんな邦題をつけたんは? 観るのをやめようと思ったボクの気持ちは分かってもらえると思う。この邦題からはB級映画の匂いしか感じない。そのまま原題を使えばよかったのに。もう少しでこんな素敵な映画を見逃すところだった。
主演はロザムンド・パイク。彼女の名前をクレジットで見つけなかったら観ることはなかっただろう。綺麗なだけでなく演技派の女優さんで、映画によって七変化するほどすごい。
『ゴーン・ガール』の彼女とこの映画の彼女は、まったく別人にしか思えない。同じ2014年に公開されている映画なんだけれどね。
基本的にコメディ作品なんだけれど、とにかく泣ける。珠玉のセリフが散りばめられて、感動で心が激しく揺さぶられる作品だった。
ロンドンに暮らす一家が主人公。両親は別居しているが、夫の父親、つまり子供たちの祖父の誕生日パーティーがスコットランドで行われる。末期がんの祖父に心配をかけないよう、両親の別居は内緒にするよう子供たちは言い聞かされていた。
ところがこの3人の子供は本当にユニーク。それぞれの個性が際立っていて、とにかくラブリー。もちろんそんなことを黙っていられるわけがない。事情を察した祖父は、不憫に思った孫たちを海岸に連れ出す。
そして祖父は語った。自分はヴァイキングの血筋だと。そして自分が死ぬときは、口先だけでおべっかを使う人間に囲まれるのではなく、心底から愛する人に見送って欲しい。できることならヴァイキングの葬式にならって、船に浮かべて遺体を海に流して欲しいと語る。
なんとその直後、祖父は本当に死んでしまう。9歳の長女のロッティは大人たちに報告に行くが、祖父が言っていたように大人たちはパーティーの準備をしながらケンカばかりしている。それで3人の子供は祖父の思いをかなえる。
イカダを作って祖父の遺体を乗せ、火をつけて海に流した。完全な死体遺棄だよね。でもこのシーンに感動する。あの祖父は本当に幸せ者。愛する孫たちに見守られて息を引き取り、希望どおりに葬ってもらえたんだからね。
ところが現実社会はそれを受容しない。そこから大人を巻き込んだ大騒ぎになる。このあたりから感動の嵐が最後まで続く。決して現実的な作品ではないけれど、そんなものを超越する世界観がこの映画にはあった。
心が洗われたよなぁ。長女も可愛かったけれど、末っ子の次女が最高。そしてロザムンド・パイクを中心としたイギリスの俳優さんたちが、そんな子供たちの演技をより際立たせていた。脚本もいいし、映像も美しい。そして思いっきり笑えて泣ける。本当に素敵な作品だった。
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