勝負を分けた一瞬に涙した
他人が殴り合う映画を観て感動の涙を流すなんて普通はありえない。でも例外があるんだよね。ボクの場合過去に何度か経験しているけれど、そこにはいつも彼がいた。
それはロッキー・バルボア。
すっかり年老いたロッキーだけど、やっぱり感動の涙でボクの顔はグチャグチャになってしまった。
『クリード 炎の宿敵』(原題:Creed II)という2018年のアメリカ映画。日本公開はちょうど1年前くらいかな。
いわゆる『ロッキー』シリーズのスピンオフ作品で、『クリード チャンプを継ぐ男』の続編。いやぁ、前作もよかったけれど、この続編はマジで感動した。これほど人間ドラマが凝縮されたボクシング映画はかつてなかっただろう。
もしこの映画を本気で楽しもうと思ったら、『ロッキー』の1作目から、『ロッキー4/炎の友情』までは絶対に観たほうがいい。もちろんこのスピンオフの前作も。でないと感動が半減するからね。
ということでここからは『ロッキー』を知らない人にはちんぷんかんぷんの内容になるwww
ロッキーにとってかつてのライバルであり、親友だったアポロ。そのアポロの息子であるアドニスのトレーナーになることで、ロッキーがボクシング界に復帰したところが前作まで。ロッキーはあくまでも脇役であり、主人公はアドニスと恋人のビアンカ。昔ならロッキーとエイドリアンだよね。
この2作目では開始と同時にアドニスがヘビー級の世界チャンピオンになる。もちろんセコンドにいるのはロッキー。ところがチャンピオンになったアドニスに恐ろしいボクサーが挑戦する。
それは『ロッキー4』で登場したロシアのイワン・ドラゴの息子であるヴィクター・ドラゴ。『ロッキー4』でイワンは、アドニスの父親であるアポロをリングで殴り殺している。いわばヴィクターは、アドニスにとって父親の仇の息子ということ。
ところがそのあとロッキーに負けたイワンの人生は没落していた。まだソ連時代の話。だから政治家である妻にも逃げられ、息子と二人で苦汁を飲む人生を過ごしてきた。だからいつかロッキーに復讐する機会を二人で狙っているという設定。
とにかくヴィクターは強い。そのモチベーションとなるのは父のイワンを見捨てた母を見返すこと。アドニスにすれば父の仇討ちになるけれど、背負っている世界がヴィクターとちがった。アドニスは比較的裕福な家庭で過ごしてきたからね。そしてロッキーにも試合を反対される。
ロッキーがいないアドニスはやはり負ける。ヴィクターの反則によって王座は守られたけれど、実質的には負けていた。当然ながらそこで再戦ということになる。ここからがマジで面白い。
結局は誰のために戦うかということ。これはボクシング以外のことにも言える。家族や友人のため、というのは聴こえはいい。だけど生きるか死ぬかの死闘を戦うとき、本当に必要なものはそれでは足りない。
ロッキーの指導を受けて自分を鍛え直したアドニスはヴィクターと互角に戦う。まさに死闘だった。いつどちらか倒れても不思議じゃない。だけど二人の勝負を分けた一瞬があった。
ヴィクターが不利になったとき、体裁を気にした政治家の母が会場を出る。父を捨てて貧乏暮らしに追いやった母への意趣返しがモチベーションの彼にとって、目の前で自分の勝利を見せれらない。
ところがアドニスは自分のためにだけ戦っていた。妻のビアンカに、そして生まれてくる娘にも誇れる人間であるためには、自分のために戦うしかないと自覚していた。最後の最後でその差が出たんだね。
なんとも言えない切ない戦いだった。倒れてもヴィクターは立ち上がろうとする。このまま戦えば命に関わる。ラストで父親のイワンがリングにタオルを投げ入れる。そして息子を抱きしめていう。「もう、いいんだ。お前は十分に戦った」と。
自分に打ち勝ったアドニスにも、そして最後まで立とうとしたヴィクターにも拍手を送りたくなった。思い出しても泣けてくる。やっぱりロッキーの物語は泣かせるよなぁ。
ちなみにイワンの元妻を演じたブリジット・ニールセンを久しぶりに観た。もちろん30年前の『ロッキー4」でもイワンの妻役で出演している。だけどその映画の公開時期は、彼女はロッキーであるシルベスター・スタローンの本当の妻だった。
たしかその次の映画の『コブラ』でも夫婦共演していたはず。すぐに離婚したけれどね。ロッキーの敵方の元妻という設定で、スタローンの元妻が客席にいたのについ笑ってしまった。なかなかいきな演出だよね〜〜。
ありゃ、興奮しすぎてメチャ長いブログになってしまった。
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