正体不明、という恐怖
新型コロナウイルスが引き起こしている騒動の根本は、このウイルスの正体が明確でないから。コロナウイルス自体は、過去にいくつも感染を起こしている。問題となるのは『新型』だということ。
被害ばかりが報道されて、ウイルスの実態がつかめない。症状の軽い人が多いとか、致死率が低いと言われても、人間は『未知』に対する恐怖を本能的に持っている。だからパニックになってしまうんだろう。
そんな『未知』に対する恐怖によって、明らかにされるものがある。なんだかわかるだろうか?
それは、普段は他人に見せることのないその人の本性。
このウイルス騒ぎに便乗してマスクやトイレットペーパーの転売で儲けようとするのもそう。そして品薄になるというのがデマだとわかっていて買い占めてしまうのも、恐怖によってその人の本性が出てしまうから。
ヨーロッパにおけるアジア人に対する差別なんか、人間の本性が表面化した典型的な出来事だと思う。普段はアジア人に対して友好的に接している人が、アジア初のウイルスが蔓延したことで本性を見せる。それはもともと、そういう差別意識がその人にあったということ。ただ隠れていただけだよね。
人間が『未知』に対する恐怖におちいると、どのような本性を見せるのかをわかりやすく描いた映画がある。
『ミスト』という2007年のアメリカ映画。何度も観ている作品だけれど、久しぶりに見直してみて、まさにいまの世界の状況を象徴しているような気がした。
ボクは映画だけでなく、もちろん原作も読んでいる。でもスティーブン・キング作品の映画化にしては珍しく、この作品は映画のほうが怖くて悲劇に終わる。それは恐怖でパニックになった人間の本性を、映像によって見せつけられるからだろう。
このブログで過去に紹介している映画なので、知らない人のために簡単なストーリーだけ紹介しておこう。アメリカ軍のある秘密実験がもとで、異世界の生物が現実世界に襲いかかった。それは霧、つまりミストをともなってやってきた。
その霧のなかには、得体のしれない『未知』の生物がいる。あるスーパーマーケットがこのミストに取り巻かれてしまう。外に出た人は、無残に殺されてしまう。やがて人々はパニックになっていく。
この物語のすごいところは、このスーパー内が人間社会の縮図になっていること。恐怖に向かって戦おうとする人ばかりじゃない。恐怖に怯えて現実を見ようとしない人、自分だけ逃げようとする人、絶望して自殺する人、そしてもっとも恐ろしいのが、他人を洗脳しようとする人。
先ほどの写真がそのシーンを象徴している。中央にいる女性は、街の人たちから変人だと見られていた。なぜなら病的なヤバい宗教観を持っていたから。だけど人間はパニックになると神にすがりたくなる。
最初はこの女性をバカにしていた人たちまでもが、やがて信者になって彼女を預言者としてあがめるようになる。そして神の怒りを沈めるために、いけにえを差し出すようにと声をあげる。
この映画で恐ろしいのはミストに存在する怪物よりも、宗教に取り憑かれて他人の命を奪おうとする人たちかもしれない。これは決して大げさな話じゃない。
今回のウイルス騒動hにおける様々な出来事は、この映画で起きていることと根本的には同じ。人間は『正体不明』ということが、それほど恐ろしいのだろうね。
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