超能力、それともペテン?
ボクは超能力も霊能力も否定しない。むしろ肯定している。だけど本当に能力を持っている人は、基本的に人前に出ないと思っている。
つまりテレビに出ているような人物は、ほとんど信用していない。いや、どちらかといえばペテン師だと思っている。
スプーンを曲げたところで何の役にも立たないし、本当に死者と話せるのなら未解決の殺人事件がもっと減っているはず。それらの著名な能力者を肯定する人は、スプーンを曲げることで思い込みが解放されるし、未解決事件が残っているのは法整備が追いついていないからだと言うだろうね。
この場でそのことについて議論する気もないし、何を書いても信じたい人には届かない。ただボクの感覚としては、本当に能力を持っている人は一般人として静かに暮らしているはず。その能力を自分の承認欲求に結びつけないと感じる。なぜなら本物の能力はあまりに強烈ゆえ、人間の自尊心を刺激するより、むしろコンプレックスを抱かせるものだと思っているから。
この映画の主人公も、まさにそんなコンプレックスを抱えている人物だった。
『レッド・ライト』という2012年のアメリカ映画。超能力者のペテンを暴こうとする主人公が活躍する物語。
トムは大学で物理学を研究している。師事しているのはマーガレットという女性物理学者。彼女は超能力や霊能者の嘘を暴くことを研究対象にしていて、それらの欺瞞を次々に暴いてきた。
だけどマーガレットが唯一恐れている超能力者がいる。それは盲目の超能力者であるシルバーという男性。トムはシルバーを研究対象にしようとするが、マーガレットは強固に反対する。彼だけには近づかないほうがいいと言い切る。
だけどトムは納得がいかない。それであえてシルバーに宣戦布告したとたん、次々と不可解な事件が起きる。そしてマーガレットが研究室で不慮の死を遂げてしまう。誰もがシルバーこそ本物の超能力者だと認めるが、トムがそのペテンを暴くという物語。
トムを演じているのは写真のキリアン・マーフィーというボクの好きな俳優。『インセプション』という映画で見てから強く印象に残っている。アイルランド出身の俳優で、コリン・ファースやリーアム・ニーソンと交流がある。いつかオスカーを受賞する名優だと思っている。
そしてマーガレットを演じるのはシガニー・ウィーバーで、シルバーを演じるのがロバート・デ・ニーロというベテラン俳優の二人。このキャストだけでも面白いという予感がする。
だけどこの映画はある部分で成功しているけれど、別の部分で大失敗をしている。それは2つのどんでん返しが関わっている。
成功しているどんでん返しは、トムこそが本物の超能力者だったということ。この映画の後半で起きるほとんどの超常現象は、彼が引き起こしたものだった。最初に書いたように、トムは自分の能力に強いコンプレックスを持っている。
だからマーガーレットと一緒に超能力者のペテンを暴きながら、本物を探していたという設定。だけどトムこそが本物だったというオチは、この映画で効果的に作用している。
ダメなどんでん返しは、シルバーに関するもの。最大のミスは、彼の盲目が嘘だったというオチ。もしシルバーの超能力を疑うのなら、まず最初に思うのが本当に目が見えないのかどうかだろう。これを放置して最後に持ってきたとことで物語が破綻している。
さらにシルバーが物語の中盤で起こした超常現象について、どのようなペテンだったのか明らかにしていないこと。ラストで完全なペテン師だと証明しているのに、この部分についてスルーしている。
せっかくトムに関する伏線が生きているのに、シルバーに関する伏線が破綻したまま放置されていた。ロバート・デ・ニーロの演技で乗り切ろうとしても、コアな映画ファンの目はごまかせない。ここが致命的な作品だったなぁ。
つまりこの映画の監督は、超能力者ではなかったか、あるいはペテン師としての実力に欠けていたのかもね〜www
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