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高羽そらさんインタビュー

我慢するにもほどがある

『武士は食わねど高楊枝』という言葉がある。

 

武士たるもの腹が減っていてもそしらぬ顔で我慢しろ、ということ。我慢や忍耐は日本人の美徳とされているところがあり、それは現代になってもさほど変わらない。ちょっとしたことに辛抱ができないと、ダメな子供の烙印を押されてしまう。

 

それは成人して社会に出ると、我慢することが多いからだろう。自分の思いどおりになることのほうが少なく、時と場合によっては耐えることも必要。そうして我慢しつつ、目的の達成のために邁進する。それこそが日本人としてのあるべき姿だと、ボクたちの世代は教えられてきた。

 

ただ我慢にも限界がある。明らかな虐待やハラスメントに耐える必要はない。不当な暴力に対しては公然と抗議するべきだろう。

 

でも日本の武士はちがう。大義名分のためなら自分の命を差し出すこともいとわない。お家を守るため、生涯にわたって耐え続けた武士が主人公の小説を読んだ。

 

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『樅の木は残った』山本周五郎 著という小説。新型コロナで図書館が閉館中、少しずつ電子書籍で読み進めていた小説。かなりの長編なので、読了するのに1ヶ月ほどかけた。

 

こんなに興奮して面白い時代小説は初めてかもしれない。調べてみると大河ドラマを含めて、過去には何度も映像化されていた。二手に別れた武士の対立と葛藤を克明に描いた作品なので、いくつものドラマが展開される。何度も映像化されて当然だと感じた。

 

史実となっているのは寛文11年(1671年)に起きた寛文事件というもの。伊達藩の内紛が元になっているので『伊達騒動』と呼ばれている。

 

ここで詳しく語っても仕方ないので、物語の中心となる3人の人物だけを紹介しておこう。

 

原田宗輔:伊達藩の国老で、この物語の主人公。

 

伊達宗勝:伊達政宗の息子だけれど、藩主の筋からは外れている。

 

酒井忠清:江戸幕府の大老。

 

物語の前提として、幕府は有力な外様大名を潰そうとしていた。対象となっているのは伊達藩、加賀藩、そして島津藩。その先駆けとして、伊達藩がターゲットになった。

 

大老の酒井は伊達宗勝をそそのかす。伊達藩に内紛を起こせば、伊達60万石を取りつぶし、そのうち30万石をお前にやる、と。もちろん酒井にそんなつもりはない。内紛を誘発させて幕府としての裁きを下すため。

 

だまされた伊達宗勝はあらゆる陰謀を企てる。とにかく次から次に内紛の種をまく。それを察知した原田宗輔は必死になって藩内で揉め事を起こさないように仕向ける。だけど伊達宗勝を批判する声は消えない。

 

そこで原田はあえて伊達宗勝に近寄ったように見せかけて、宗勝の懐に飛び込む。そして宗勝に対する不満が出るたび、それらの声を封じた。つまり紛争を起こそとする宗勝の思うままにさせることで、紛争になることを未然に防ごうとしていた。

 

それは10年以上も続く忍耐の日々。原田の意図を知っているのは親友の国老の二人だけ。やがて原田は妻を離縁し、彼を慕っていた友人からも、そして若手の武士からも見離されていく。それでもじっと耐えていた。

 

だがついにある国老が我慢の限界に達する。伊達宗勝の非道な行いを、幕府の老中たちに訴えた。そしてそのことについて審理が開かれることになった。

 

それまで我慢を重ねてきた原田は、ついに最後の切り札を使う。そのことによって伊達藩の取りつぶしを防ぐことができた。ところが黒幕の酒井は審理の最中に刺客を放ち、伊達藩の重職を殺してしまおうとする。

 

そこでも原田は果敢に戦うだけでなく、その刃傷沙汰を自分の乱心だと見せかけて伊達藩の危機を防ぐ。原田はその場で亡くなり、彼の息子を含めた一家はすべて死罪。原田家は断絶するけれど、伊達藩は救われたという壮絶なエンディングだった。

 

『伊達騒動』の史実として、原田は下手人として歴史的には悪人扱いとなっていた。それを山本周五郎さんが視点を変えて、幕府の陰謀を防いだ人物として描いた作品。

 

我慢するにもほどがある。と思ってしまったけれど、原田宗輔という忠臣の生き様に感動させられる物語だった。

 

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高羽そら|たかはそら(作家、小説家)プロフィール

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高羽そら(たかはそら)
今後の目標:毎年1つの物語を完成させたいと思います。
生年月日:昭和37年5月10日
血液型:A型
出身地:京都市

【経歴】
1962年京都市生まれ。数年前に生活の拠点を神戸に移してから、体外離脱を経験するようになる。『夢で会える 体外離脱入門』(ハート出版)を2012年1月に出版。『ゼロの物語Ⅰ〜出会い〜』、『ゼロの物語Ⅱ〜7本の剣の守り手〜』、『ゼロの物語Ⅲ〜次元上昇〜』の3部作を、2013年7月〜12月にかけて、オフィスニグンニイバよりAmazonのKindleにて出版。現在も新たな物語を執筆中。

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