ウイルスが放つ疑心暗鬼の罠
目に見えないものは怖い。人間が幽霊を怖がるのは、日常的に見えない存在だから。
それと同じ理屈でウイルスも人間に恐怖をもたらす。新型コロナウイルスが怖いのは、目に見えないから。それゆえ誰が感染しているか分からない。無症状の人もいる。だから神経質になった人は、自粛警察やマスク警察となって他人を罵倒してしまう。
ウイルスが放つ最大の脅威は病気だけれど、それと同じくらい最悪なものがある。それは疑心暗鬼という罠。この罠によって、人間の信頼は簡単に骨抜きにされてしまう。それはウイルスを扱った映画を観るとよくわかる。
先日のブログで、ホラー映画の効果について書いた。そのときにリンク先の記事で紹介されていた映画を観た。
『イット・カムズ・アット・ナイト』(原題:It Comes at Night)という2017年のアメリカ映画。ホラー映画にはシミュレーション効果があるそうだけど、この映画に関してはそうとは言い難い。なぜならメチャ怖すぎるから。そして最高に後味が悪い。そのうえストーリー的にスッキリとしない。
だけどボクは、この手の映画が最近は好き。スッキリさせてもらえるのは気持ちいいいけれど、モヤモヤを残されるのも快感になってきたwww
スッキリしない部分をあげておこう。どのようなウイルスなのかわからない。世界的にどうなっているのかも不明。おそらく都会は壊滅していると思われる。
ウイルスの致死率はかなり高そうで、感染がわかった段階で殺されている。映画の冒頭でも、いきなり主人公の父親が感染して強制的な死を迎えるシーンで始まった。
感染した父親を手にかけ、近くの森で火葬したのが主人公のポール。どうにか感染を逃れて、森の中で暮らしている。家族は妻のサラと17歳の息子のトラヴィス。食料は少ないけれど、水を蒸留したり殺菌等の感染対策、さらに防犯対策を徹底することで、外部の人間とウイルスの侵入を防いで暮らしていた。
ところがある日、ウィルという男が家に侵入しようとする。空き家だと知らずに入ったらしい。妻と息子がいるけれど、水がないので探していたとのこと。ポールは最初ウィルを殺してしまうつもりだったけれど、彼が食料を持っていることがわかる。
話し合った末、同居して助け合うことで、この危機を乗り越えようとする。それでウィルの妻のキムと、幼い息子のアンドリユーとの共同生活が始まる。最初はどちらも相手を信用していなかったけれど、やがて二つの家族は打ち解けて暮らすようになる。
いくつかのドラマが進行しながら、ラスト近くで突然に危機が訪れる。17歳のトラヴィスが飼っていた犬が感染したことで、ウィルの息子のアンドリューが感染している可能性が高くなった。それでいわゆる『密』を避けるため、二つの家族は家庭内別居を選択する。
だけどそれは以前から存在していた疑心暗鬼を、目に見えるように炙り出しただけ。ポールと妻のサラは、息子のアンドリューに家族以外を信用しないようにと念を押す。
なぜならウィルがいくつか嘘をついていたことが明らかになる。そのことをポールはずっと気にしていた。その疑心暗鬼を察知したかのように、ウィル一家は水と食料を盗み出してこの家から脱走しようと計画していた。
このあとの展開は悲惨。最初に書いたようにメチャ怖いし、後味が強烈に悪い。まだ新しい映画なのネタバレしない。気になる人は映画をどうぞ。心理ホラーという観点で素晴らしい作品だと思う。
映画を観るときのポイントは、この完璧な家に誰がウイルスを持ち込んだか注目すること。やや抽象的に描かれているので、うっかりすると見逃してしまうから。
ただしスッキリが希望の人は、観ると後悔するからやめておいたほうがいいかもねwww
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