教会という名の犯罪者組織
キリスト教のカトリックという言葉を耳にしてどんな印象を持つだろう? もっとも多いのは、バチカンのローマ教皇だろうね。
でもボクはちょっとちがう。洋画の見過ぎなのかもしれないけれど、カトリックという言葉で頭に浮かぶのは、神父による性的虐待事件。その犠牲者は少年少女たち。
なぜ関心を持っているかといえば、日本人のボクには不思議でしかたないから。宗教家が聖人だとは思わない。ボクが京都で仕事をしていたとき、誰もが知っている京都の有名なお寺の僧侶から、賄賂を要求されたことがある。そうしないと仕事を回さない、とまで言われた。
ただ日本において、宗教家による子供への性的虐待という事件を耳にしたことがない。皆無ではないのかもしれないけれど、アメリカやヨーロッパのカトリック神父ほど頻繁に起きているとは思えない。日本の場合は、こうした犯罪は教師による事件のほうが多いような気がする。
カトリックの神父によるそうした不祥事は、いまになっても報道されている。この事実を世界的に広げるきっかけを作ったのが、『ボストン・グローブ』新聞社の記者たちだった。その実話について映画化された作品を観た。
『スポットライト 世紀のスクープ』(原題:Spotlight)という2015年のアメリカ映画。実話の映画化で、これほど最初から最後まで釘付けになった映画は久しぶり。神父による子供への性的虐待は、おそらく考えられないほど過去から行われていたはず。だけどカトリック教会の組織によって、ずっと隠蔽されてきた。
なぜなら信者が協力するから。自分の子供が虐待を受けても、神を恐れた両親は口を閉じてしまう。問題を起こした神父は転勤させて終わり。弁護士までも結託して、両親との示談をまとめてきた。
そんな実態を暴いたのが、『ボストン・グローブ』という新聞社のなかでも、調査報道班として活躍してきた『スポットライト』というチーム。リーダーはマイケル・キートン演じるロビンソンで、彼を含めてチームの精鋭は4人。そしてロビンソンの上司であるベン、編集局長のバロンを含めた写真の6人によって神父たちの悪事が暴かれた。
最初はたった一人の神父の事件として取材を始めた。ところが新任の局長となったバロンの指示で、徹底的な調査が開始された。出てきたのはなんと13人の神父。でもそんなものじゃない。最終的には、この教区だけでも87人もの神父が虐待を行なっていた。
本当によくできた映画だった。ボクはようやくこの問題について、欧米で何が起こっていたのかを理解できたような気がする。本当にひどい。レイプされたのは少年だけでなく少女もいた。その子供たちの心の傷を思うと、宗教組織について不信感しか抱けない。
『スポットライト」のメンバーが記事を公表したのは2002年になってから。本当は2001年の8月ごろに証拠を手にしていた。ところが911のテロ事件が起き、報道はそちらが優先された。そこでメンバーたちは個人の犯罪の追求だけでなく、カトリック教会という組織を告発することに決めた。
その証拠を固めるため、2001年の年末までチームは犠牲者や関係者に取材を重ねていく。マスコミとはこうあるべき、という本来の姿を見せてもらえた作品だった。おそらくマスコミ関係者がこの映画を観たら、現状の自分達を恥じるのでは? そんなことを感じた、とても素晴らしい作品だった。
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