無差別テロの背後に何が?
かなり衝撃的な小説を読んだ。そして読み終わっても、いまだにその興奮が残っている。
直木賞の候補作ということでこの作品に出会ったけど、著者の他の作品を読んでみたくなった。すごい、という言葉しか出てこない。
『スワン』呉勝浩 著という小説。まだ比較的新しい作品なので、ネタバレしないように注意しよう。
まずは物語の冒頭からぶっ飛ぶ。『スワン』というのはかなり大きなショッピングモールの名前。架空の施設だろうけれど、きちんと図面まで掲載されている。ボクの印象として近い構造は、甲子園の近くにある『ららぽーと甲子園』かな。
3人のテロリストが日曜日のモール街にやってくる。2発しか打てない自作の銃を60丁、さらに日本刀まで用意している。ただ駐車場でもめたことで、犯人のひとりは射殺される。残った二人が二手に分かれて、次々と人を殺していく。
結果として20人以上の人が犠牲になり、大勢のけが人が出た。犯人の二人は警察に捕まる前に自殺している。この事件に関してはこれだけ。だけどあまりにリアルな描写なので、この導入部分だけで圧倒されてしまう。
この物語の要因となるのは、スカイラウンジで起きた出来事。主人公は片岡いずみという名の16歳。犯人のひとりがスカイラウンジにやってきて、そこにいた客や店員を四つん這いにさせて並ばせた。そして死刑のように順に殺していく。
その際犯人は、いずみに銃を突きつけて命令した。「殺す人間を選べ」と。もちろんいずみは誰も指示しない。だけどチラッと目線を向けただけで、まるで彼女が選んだかのように殺していく。そして無傷ないずみだけを残し、犯人はその場で自殺する。
スカイラウンジで命が助かったのは、いずみと彼女の同級生。いずみをいじめていた生徒で、この日もいずみをスワンに呼び出していた。二人ともクラシックバレイを習っていて、その同級生は『白鳥の湖』の主役に選ばれそうないずみに嫉妬していた。
この物語のタイトルは、『白鳥の湖』にも関連している。ただ女生徒は犯人に撃たれて、片目を完全に失くしてしまうという重傷を負う。
物語はそこから数ヶ月後。事件の被害者に菊乃という老女がいた。ある大金持ちの母親で、日曜日はスカイラウンジで過ごすことを日課としていた。本来ならスカイラウンジで殺されたはず。なのにその老女は1階のエレベーターで犯人に射殺されていた。
母親の死の真相を知りたい息子は、弁護士を雇って独自に調査を進める。そしてその事実に近づけるであろう5人を選ぶ。そのなかにいずみもいた。『お茶会』と称するその集まりで各自の体験談が語られる。真実を話せば報酬が出るけれど、嘘をついたり黙秘をすれば交通費しか出ない。
その週に1度の『お茶会』にて、驚くべき事実が明かされていく。もちろん悪いのは犯人。だけど主人公のいずみは、スカイラウンジの人を見殺したとしてネットで炎上していた。犯人と肉体関係があったから殺されずにすんだ、というデマまで流されていた。そのせいでPTSDとなり、学校も休んでいる。
だけど事件に向き合って生きていくため、彼女は『お茶会』に出席する。そして菊乃の死の真相を知ることで、いずみが隠していた最大の秘密も明らかになる。それは片目を犯人に撃たれた同級生に関わること。
これ以上はネタバレになりそうなので、ここでやめておこう。発端はテロ事件だけれど、『お茶会』に出席している5人の真実に引き込まれていく。そして泉が隠していた事実にもマジで驚いた。
これはかなりオススメのミステリー作品。だけど読んだあとは、ショッピングモールに行くのが怖くなるかもよ〜〜www
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