人種差別に関する斬新な視点
黒人差別に対するアメリカの抗議が激化している。今月の23日、アメリカのウイスコンシン州で黒人男性が白人警官に銃撃される事件が起き、今年の5月以来激しくなっていた抗議行動が再燃している。
幸い黒人男性の命に別状はないけれど、もう歩けないかもしれないそう。もちろん警察にも言い分はあるだろう。海外のニュースなので、くわしい経緯はわからない。だとしても白人警官が黒人に銃を発砲したという行為だけで、抗議の炎を燃やす燃料になるのを避けられない。なぜなら、いまに始まったことじゃないから。
アメリカにおける人種差別の実態は本当に恐ろしい。黒人だけでなく、アジア人も差別を受けている。その恐怖がどれだけのものか、これまで映画や小説を通じて多くの人によって語られてきた。
だけどまったくちがう切り口で構成された映画を観て、ボクは斬新な視点から人種差別を知ることができた。そしてそれはさらに恐ろしいものだった。
『ブラック・クランズマン』(原題:BlacKkKlansman)という2018年のアメリカ映画。主演しているのはデンゼル・ワシントンの息子であるジョン・デヴィッド・ワシントン、そして『スターウォーズ』最新シリーズでブレイクしたアダム・ドライバー。
コメディタッチな部分もある作品なんだけれど、笑うに笑えない。それは監督のスパイク・リーが本気で人種差別の実態を伝えようとしているからだろう。映画の冒頭では実話に基づくというテロップが出る。
映画の舞台は1972年のコロラド州コロラド・スプリングス。ジョン・デヴィッド・ワシントンが演じるのは、黒人として初めてこの州の警察官になったロン。最初は資料室での仕事をさせられるけれど、彼は署長に潜入捜査官になりたいと直訴する。
人種差別に関するトラブルが多い地域なので、その訴えは受け入れられた。ロンは捜査官の素質があり、白人至上主義者のKKKの幹部との接触に成功する。ロンは完璧な白人言葉と黒人言葉を使い分けることができたから。
ところが黒人の彼がKKKに潜入捜査するのは無理。そこでアダム・ドライバー演じるフリップがロンの名前で潜入する。電話での交渉はロンで、実際にKKKの集会に行くのはフリップというパターン。一人の人間を二人が演じることになる。
まだ新しい映画なので、ネタバレはここまで。KKKの過激派がプラスチック爆弾を手に入れ、人種解放を訴える黒人の集会で使用することがわかった。二人の活躍によって、その陰謀を阻止するという物語。
この映画が興味深いのは、黒人のロンもユダヤ人のフリップも差別される側だということ。KKKは黒人だけでなくユダヤ人に対しても強い差別意識を持っている。だからロンとフリップは同じ境遇で差別する側に潜入していく。
差別される側がメインで物語が進行する作品が多いけれど、この作品はKKKという差別する側で展開していく。黒人やユダヤ人を人間扱いしない彼らの会話がマジで恐ろしい。それも半分笑いながら、恐ろしい言葉を吐いていく。まったくちがう視点から見ることで、人種差別の根の深さを痛感させられる作品だった。ちなみにKKKの幹部を演じた俳優さんは、あまりにひどい役ゆえに、一時的なうつ状態になったそう。
とにかく本当に素晴らしい作品だと思う。舞台は1972年だけれど、いまにつながるものがある。まだ観たことがない人は、絶対に観たほうがいい。ラストはハッピーエンドで痛快、かつかなり笑えるから安心して観られるよ〜!
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