嫉妬と誤解が引き起こす悲劇
人間は嫉妬する生き物。仕事であれ恋愛であれ、嫉妬という感情はついてまわる。自分が嫉妬するときもあれば、されるときもあるだろう。どちらにしてもそこから建設的な結果は望めない。
その嫉妬に誤解が混ざり合うと、完璧なるカオスが発生する。何が真実なのかわからなくなり、その渦の中心に巻き込まれてしまうと、疑心暗鬼になった人間は想像もできない行動に出てしまう。そんな人間の心理を描いた小説を読んだ。
『特捜部Q―吊された少女―』ユッシ・エーズラ・オールスン著という小説。ずっと追いかけている『特捜部Q』シリーズの第6弾を読了した。ちなみに過去の作品を紹介しておこう。
『特捜部Q―檻の中の女―』
『特捜部Q―キジ殺し―』
『特捜部Q―Pからのメッセージ―』
『特捜部Q―カルテ番号64―』
『特捜部Q―知りすぎたマルコ―』
ボクが読了したのは上記の5作品で、今回が6作品目。ちなみにすでに第7弾は出版済みで、今年の7月に第8弾も出版された。著者は10作まで続けることを明言しているので、いよいよこの物語も終わりが近づいてきた。かなり寂しい。
何度もこのブログで書いているとおり、特捜部Qは未解決事件を捜査する部署。リーダーは刑事のカールで、助手のアサド、秘書のローセ、そして前回からゴードンという若い男性がチームに加わっている。誰もが個性的な人物で、特にアラブ人のアサドは謎が多い。それでも今回の6作品目でかなり彼のことがわかってきた。
さて今回の事件も複雑怪奇。二段書きの単行本で600ページを超える長編なので、かなり込み入ったストーリーになっている。田舎の警察官がカールに電話をかけて特捜部Qへの捜査依頼をした。だけどカールは断った。
その翌日、男性警察官は自殺してしまう。ある少女が自動車にはねられ、その勢いで木に吊り下げられて死んだ。警察官の自宅には、事故扱いされたその事件が殺人である証拠が集めらられていた。犯人だと思われる男性の写真もある。だけど名前さえわからない。
そこで特捜部Qがその謎の男を追うことになる。かなり複雑なストーリーなので、ブログで紹介するのは難しい。簡単に語るとすると、最初に書いたように嫉妬と誤解が事件を複雑にしていた。さて結論を言おう。だから読もうと思っている人は、ここでサヨウナラwww
なんと犯人は警察官が探していた男ではなく、警察官の妻だった。警察官が探していたのはフランクという男。かなりのハンサムでカリスマ性もある。そしてフランクは新興宗教の指導者として信者を集めていた。
ただ問題は女癖が悪い。少女の事件が起きたときも、警察官の妻、少女の友人等と関係を持っていた。だけど亡くなった少女と出会ったことで、フランクは彼女を生涯連れ添うパートナーとすることにした。それほどの美しい女性だったから。
つまりそのとき浮気をしていた警察官の妻が嫉妬をして、その少女を轢き殺した。ところがそれがフランクの起こした事件だと誤解した宗教団体の女性が、フランクを守るために証拠を隠滅。なぜなら彼女もフランクを愛していたから。そしてその誤解が原因で、その女性は次々に連続殺人を犯してしまう。
なんとも複雑な事件。10年以上もかけて犯人を追いかけていた警察官は、まさか自分の妻が犯人だとは思っていなかったというオチ。とにかくよくできたストーリーだった。
それにしてもカール、アサド、ローセ、そしてゴードンのチームは最高。ますます彼らが好きになってきた。さて、次は第7弾の物語へ進むとしよう。楽しみだなぁ。
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