前へ進む勇気をもらえる列車
変化が怖いのは人間の本質。だからできる限り現状にしがみつこうとする。だけどボクたちは肝心なことを忘れがち。
それは『諸行無常』ということ。
ボクたちが同じ日々だと思っている毎日の生活は、常に変化を続けて止まることがない。まったく同じものなんてあり得ない。わずか数十秒のあいだに誰かが生まれ、誰かが死んでいる。生きている人間の構成が変われば、当然ながら世界も変化する。
それゆえ変化を受け入れることは、人間にとって欠かせない資質だと思う。変化に対応して自らの動きを変えていかないと、いつかは袋小路に迷い込んでしまうことになる。今年の新型コロナは、まさにそのことを証明していると思う。
ただ最初にも書いたけれど、変化は怖いもの。いまのままではダメだと思っても、未来への不安のほうが勝ってしまう。あるいは現状に執着している自分がいたりする。そんなとき、前に進む勇気が必要になる。
その勇気をくれるのは、親身になってくれる他人の言葉。家族や友人だけでなく、映画や小説の主人公が発したセリフの場合もあるだろう。先に進むかどうかを迷っている人は、ちょっとした後おしによって一歩を踏み出せる。背中を押してもらえることで、明日を生きてみようと思う。もしかしたらそれは、人間に与えられた奇跡かもしれない。
そんな奇跡を物語にした映画を観た。
『阪急電車 片道15分の奇跡』という2011年の日本映画。機会があったら観ようと思いつつ、10年近く経ってようやく観ることができた。いやぁ、実に素晴らしい映画だった。どれだけ感動して泣いたことか。
関西圏以外の人には阪急電車といってもピンとこないだろう。京都から大阪、そして神戸にかけて敷かれている古い私鉄。ボクはいまも阪急沿線に住んでいるし、神戸に引っ越す前の京都でも阪急沿線だった。だからどの列車よりも親近感を持っている。
この映画はいわゆる群像劇で、写真の8人に関わる物語。それぞれに抱えているものがあり、自分を変えたいと感じている。そんな彼らが列車で出会うことで、互いに触発され、声をかけ合う。そして新しい自分へと変わるため、次の一歩を踏み出すという物語になっている。
舞台となっているのは阪急電車の今津線。宝塚歌劇で有名な宝塚駅から、西宮北口までの片道15分の列車での出会いが描かれている。ボクも何度も利用したことがある路線なので、地元の人間にとってこれほど楽しい映画はない。
登場人物それぞれの物語に感動するんだけれど、ボクが感心したのは関西弁。関西を舞台にした映画やドラマを見たとき、いつも気になるのが変な関西弁。ところがこの映画は、ほぼ違和感なく最後まで観ることができた。
戸田恵梨香さんは神戸出身なのは知っているので納得。だけど他の出演者も関西出身の人がズラリ。南果歩さん、谷村美月さん、有村架純さん、芦田愛菜さん、相武紗季さん、鈴木亮平さんというメンバーは関西出身。そりゃ違和感ないはずやわ。
イギリス映画で『ラブ・アクリュアリー』という素晴らしい群像劇映画があるけれど、まさにこれは日本の『ラブ・アクチュアリー』だった。もし彼らのその後があるなら、続編が見たくなる素敵な作品だった。
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