加害者家族を救ったもの
ニュースになるような犯罪が起きると、被害者とその家族に対するケアが問題にされることが多い。記憶に新しいところでは、京都アニメーションのビルが放火されたことによる被害者の実名報道について、様々な意見がネットで飛び交った。
話題性の高い事件だと、マスコミが被害者家族のコメントを取ろうとする。そのことの是非について、ネットを通じて社会に問題提起がなされてきた。最近の雰囲気としては、マスコミの自重を求める声が多いように思う。
ただほとんど野放しになっているのが加害者家族のケア。事件の被害者という観点で見れば、加害者の家族も被害者と同じ立場だと思う。いきなり事実を突きつけられて、加害者扱いを受けてしまう。あるいは興味の対象としてマスコミに追い回される。
ある記事を読んで、加害者家族に対する法的な保護が必要だと強く感じた。
検索される恐怖に怯えた日々。夫の逮捕でブログ急上昇【加害者家族の告白】
かなり生々しい内容。これは誰にも起こりうることだと思う。
公務員だった夫が、覗きの容疑で逮捕された。仕事で深夜に出ることが多く、連絡が取れなくなったときは事故にあったかと思い、妻は本気で心配していたそう。ところが警察から連絡があり、夫が逮捕されたということを聞かされた。
人を殺したわけじゃないので、すぐに釈放された。夫も必死で謝罪している。だけどいまのネット社会は、その程度で許してくれない。公務員だった夫は実名報道をされた。そのことによってこの家族はとてつもない社会の荒波に飲み込まれてしまった。
妻はSNSやブログで投稿をしていた。それまでブログは数百程度のアクセスだったのに、事件のあとは数万単位のアクセス増加となった。そしてそこには見るだけで失神しそうな罵詈雑言が書かれている。近所の友人だと確信できる書き込みもあったそう。
この恐怖は経験した人でないとわからないだろうと思う。妻は犯罪者ではないのに、夫の名前から検索されてしまう。そして匿名をいいことに、犯罪者家族を破滅に導くような言葉が投げつけられる。
結局、夫とは離婚することになり、この家族は崩壊した。ネットが存在する以前だったら、人の噂も七十五日ということわざが有効だったろう。だけどいまのネット社会では無理。この家族はネットによって追い詰められてしまった。
ところが不思議なもので、死にたいと思っていた妻を救ってくれたのもネットだった。離婚して少し落ち着いたころ、ネットでの投稿を再開した。もちろんそれを嗅ぎつけて、誹謗中傷の言葉が投稿される。
だけどそれ以上に、同じ加害者家族からの励ましの言葉が多く集まったそう。それほど苦しんでいる人が多いということだろうね。ネットによって追い詰められた女性が、同じネットによって救われたという皮肉なことになった。
最初にも書いたけれど、これは誰にも起こること。犯罪じゃなくても、自家用車を運転している家族が誰かを死なせてしまうかもしれない。それまで平和だった家族が、たったひとつの出来事で崩壊してしまう。
ただ現状では、このことを避けるのは難しい。加害者家族の立場になったとき、すぐにネットを遮断するしか方法がない。だけど子供たちがいれば、そうもいかないだろう。引っ越しや転校ということも考慮する必要が出てくる。
加害者家族も被害者であることが認識されるよう、このリンク先の記事のような事実が拡散されたらいいなと思う。そして具体的な法整備が、それに追いつくことを願っている。
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