地球侵略を救った呪い
噂に違わず、とてつもなくスケールのでかいSF小説を読了した。恋愛小説とちがって物理学用語が飛び交うので、その手の物語に馴染めない人には読みづらいかもしれない。だけどこの物語をそんな理由だけで知らないままなのはもったいない。
多少読みづらくても、十分に理解することができる。そして地球人として、宇宙における自分の立ち位置について本気で考える機会をもらえる作品だと思う。たしかドラマ化されると聞いたような気がするけれど、これは絶対に映像で観たい作品。いやぁ、本当にすごい。
『三体II:黒暗森林』下巻 劉慈欣 著という小説。上巻についての感想は『地球侵略まで400年は長い?』というブログに書いているので参照を。
全部で3部作となる『三体シリーズ』の第2弾。この小説の基本を説明すると大変なので、上巻についての感想を読んでもらうとおおよそを理解してもらえると思う。
地球に攻めてくるのは三つの恒星を持つことで移住を余儀なくされた三体人たち。ただし到着までに400年かかる。その期間中に地球人の科学が進化することのないよう、さらに地球人の計画を知るために特種な素粒子を送り込んでいる。
その対抗策が、心のうちを隠すことのできる人間を選ぶこと。選ばれた4人の面壁者のうち3人は、あらゆる科学技術を駆使して三体人への対抗策を考え出す。もちろん本心は誰にも明かさない。ところがそのすべてが失敗に終わる。
ただ一人、この第2弾の主人公である羅輯(らしゅう)だけが不思議なことをやらかす。それはある架空の恒星系にかけた『呪い」だった。世間は彼を笑い者にして相手にしない。ところが三体人、並びに三体人を支援している地球の組織は必死になって羅輯を殺そうとする。
その結果ウイルス兵器に侵された羅輯は冬眠に入る。そして目覚めたとき世界が一変していることに気が付く。200年経った地球は、核融合による永久機関を作ることでフリーエネルギーを手にしていた。さらに大規模な宇宙艦隊を結成していて、三体人の侵略など怖れる必要のない世界になっていた。
ところがそんな地球の期待は一瞬で壊される。三体人が放った一機の探索船によって、わずか30分足らずで地球が有する何千という宇宙戦艦が破壊されてしまう。地球人は絶望するしかなかった。
ところがその時期になって、200年前に羅輯が実験的に放った『呪い』によって、その対象となった恒星系が破壊されていることがわかった。絶望していた地球人は、もう一度救世主として羅輯に望みを託す。
このあたりは最高に面白いところなので、ネタバレはやめておく。この第2弾はまだ今年に出版されたばかりだからね。ただその『呪い』のヒントとなった公理だけを紹介しておこう。
1. 文明は生き残ることを最優先とする。
2. 文明は成長し拡大するが、宇宙の総質量は一定である。
この2つは、250年前に葉文潔という第1弾の主人公である女性科学者が羅輯に語ったこと。彼はここから三体人に対抗する『呪い』の方法を思いついた。この公理に加えて、猜疑連鎖と技術爆発という言葉からその仕組みを見つけ出す。
三体人もそのことに気づいていて、羅輯の行動を封じる策を講じていた。ところが完全に思考を隠すことで、羅輯は三体人の裏をかく。この終盤のやり取りは本気で興奮した。メチャ書きたいけれど、これから読む人のためにやめておこう。
こうなると続きが気になるよなぁ。第3弾の邦訳が出るのは来年の春らしい。それまで我慢して待つしかないよね。
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