本物のジャック・リーチャー!
物語の内容の深さと緻密さにおいて、映画は原作に勝てないという宿命を持っている。上映時間という尺の問題があるから、それは致し方ない。
だから映画の場合、出演者のネームバリューによって原作との差を補おうとする。それが成功する場合もあれば、失敗することもあるだろう。
ある映画について、原作のファンからクレームがついていた。主演した俳優はトム・クルーズ。原作を読む前のボクは、そのクレームについて大袈裟だと思っていた。だって主演したトム・クルーズがめちゃカッコ良かったから。
だけど原作を読んで考えが変わった。原作の主人公まったくキャラがちがう。映画よりもセクシーでカッコよかった。
2021年 読書#11
『キリング・フロアー」上巻 リー・チャイルド著という本。この作品はアメリカでベストセラーとなっている『ジャック・リーチャー』シリーズの第1作。この作品によってジャック・リーチャーという魅力的な人物が世の中に登場した。
映画はこの第1弾よりずっとあとに刊行された『アウトロー』という作品が1作目。映画では『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』という2作目も2016年に公開されている。どちらの映画も観ているボクにとって、トム・クルーズのジャックは脳内で固定化されている。
元憲兵で、軍隊を辞めたあとアメリカ各地を放浪しているという設定は同じ。そして行き着く先で事件に巻き込まれ、訓練された肉体と卓越した推理力によって事件を解決していくという物語。
でも同じなのはそれだけ。トム・クルーズの見た目の風貌とちがい、原作のジャック・リーチャーは身長が190センチほどある大男で、髪の毛は金髪。憲兵時代は優秀な捜査官だったので、観察力がずば抜けていたり素手で敵を殺せる能力は同じ。
ただ映画のジャックは、女性に惚れられても手を出さない。硬派のイメージが強く、女性を寄せ付けない雰囲気がある。だけど原作のジャックは、いまのところそんな様子が微塵もない。警察官の女性を口説いた末に家へ転がり込んで、ちゃっかりやることはやっているwww
でもボクとしては原作のジャックのほうに好感が持てる。007のジェームズ・ボンドの魅力のひとつは、男の色気だったからね。だから主人公のキャラとしては原作のほうが物語に深みが出ると思う。そういえばトム・クルーズが演じているイーサン・ハントも身持ちが硬いよなぁ。トムの意向かな?
話がそれたけれど、とにかく面白い物語。たまたま訪れたジュージア州の小さな町で、ジャックは殺人の容疑で地元の警察に逮捕される。この町では偽札に絡んだ大規模な陰謀が起きているようで、放浪してきたジャックが濡れ衣を着せられた。
だがアリバイが証明されて釈放されたことで、ジャックはすぐにでもこの町を離れるつもりだった。ところが殺人の被害者が、7年ほど会っていなかった自分の兄だと知る。それゆえ兄を殺した人間を野放しにできない。それでジャックはこの町に残ることにする。
ただ信用できる人間は少ない。この町の権力者はあらゆるところに影響を及ぼしている。信頼できるのはマークレイブ警察の刑事部長であるフィンレイと、同じ警察に勤めるロスコーだけ。ちなみにジャックといい仲になったのはこのロスコー。
上巻の最後ではさらに殺人が起きる。ジャックに濡れ衣を着せようとした警察署長夫婦が惨殺される、その自宅の床が血まみれだったことで、『キリング・フロアー』というタイトルになっている。さらにロスコーの自宅に居候しているジャックも命を狙われる。上巻はここまで。
いまのところ黒幕の正体と犯罪の詳細は不明。だけどジャックの兄は財務省の捜査官だったので、偽札関連の犯罪だということだけわかっている。とりあえず本物のジャック・リーチャーに出会えてよかった。この作品の下巻だけでなく、邦訳されているすべてのシリーズを読もうと思っている。
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