予知能力に対抗する方法
小説や映画の作品に接して、その物語のすべてを受容できることはまずない。ツッコミどころをいくつも抱えつつ、何か一つでもキラッと光るものを感じることができたら、その物語との出会いは成功だと思う。
おぉ〜と思わせる箇所を見つけられたら、ボクはその作品に合格点を出す。今日観た映画は全体としてB級色が強い作品なんだけれど、ある設定に興味を引かれて最後まで楽しむことができた。
2021年 映画#22
『PUSH 光と闇の能力者』(原題:Push)という2009年のアメリカ映画。いわゆる超能力バトルもので、CGを楽しむような作品。ただ想像していたよりストーリーが凝っていて、超能力を介した心理戦のような緊張感を楽しむことができた。
少し前提がややこしい。第二次世界大戦以降、各国は超能力者を兵器として使うことを研究していた。それはディビジョンと呼ばれていて、その研究のために超能力を持つ人間は政府組織に拉致され、人体実験を受けていた。そしてその多くは亡くなっている。
そんな不幸な連鎖を断ち切るため、10年前にある予知能力者が計画を立てた。それが10年後の登場人物たちによって具現化されていくという物語。
主人公のニックは、10年前に予知能力を持つ父親を目の前でディビジョンに殺されている。彼も念力を使える能力者だったので、ディビジョンの追手から逃げるため香港に潜んでいた。ただ死ぬ直前の父によって、花を持った少女を助けるように遺言されていた。そのことによって超能力者を救うことができる、と。
その少女が写真のダコタ・ファニング演じるキャシー。彼女は予知能力を持っていて、同じ能力を持つ母を助けるためにニックに接してきた。最初は抵抗していたけれど、父の遺言どおりニックはキャシーを助けようとする。まぁ、キャシーに助けてもらっているのはニックの方だけれどねwww
ニックにはキラという恋人がいた。彼女は他人の心に侵入して操る能力を持っている。キラはディビジョンに拉致されて、ある実験を受けていた。能力を増強するドラッグがあり、その注射を受けて生き残ったのはキラだけ。それゆえ脱走したキラを捕まえるため、ディビジョンは能力者を送り出す。
ニックはキラを見つけ、キャシーや仲間たちとディビジョンに対抗する。さらにややこしいのは香港を仕切っている中国側のディビジョンが存在すること。つまり三つ巴の戦いとなってややこしいことになってくる。
問題なのはどのチームにも予知能力者がいること。だから作戦を立てても読まれてしまう。そこでニックが考えた作戦がとても良かった。未開封の手紙をチームに渡す。そこにはニックがそれぞれの人物にやってほしい使命が書かれていた。だけど決められた時間が来るまで手紙を読んではいけない。
そしてニック自身も自分宛の手紙を書いて封印すると、能力者に依頼してすべての手紙に関する記憶を消してもらう。つまり次にどんな行動をするのか、誰も手紙を読むまではわからない。それゆえ予知能力者に読まれることがないということ。この設定が、ボクはとても気に入ってしまった。
それがラストシーンに生きてくる。キラだけは手紙を開けるタイミングを指定されていなかった。ニックが言ったのは「迷いを感じたとき」ということだけ。そして一度は敵の仲間になったと見えるキラが、その手紙を開けて真実を知るというエンディング。そして彼女によって最後のミッションが実施される。
超能力映画が嫌いな人には、ちっとも面白くない作品かもしれない。だけど海外ドラマの『ヒーローズ』が好きな人なら、絶対に楽しめる作品だと思う。
ボクが感心したのは、少女時代のダコタ・ファニングが綺麗なこと。子役時代の彼女も、そして20代後半になった彼女も好きだけれど、この十代前半の彼女がこれほど美しかったとは。少女らしさを感じさせながらも、大人の色気の萌芽のようなものを放っている。そして何より演技が上手い。
この映画は、彼女の美しい姿と素晴らしい演技を見られるだけでも値打ちがあると思うよ!
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