知ってる&できるの高い壁
今日ネットの記事を見ていたら、『初心者でもできる明晰夢を見る方法』というものがあった。興味を持って内容を読むと、なるほどなぁと思う方法だった。
ボクが本に書いたことと基本的に同じ。要するに「これは夢だ」という言葉を、夢を見ている最中にどのようにして引き出すかということ。もちろんその記事の方法も、ボクが本に書いた方法であっても、初心者の人でも体験することができる。
ただし方法を『知ってる」と『できる』には、とても高い壁があるのは事実。知識があるから、すぐにできると思う人ほど挫折することが多い。誰にでもできることであっても、実際に明晰夢を日常的に体験するためには根気が必要。何度も失敗を重ねながら、根気よくその方法をくり返すしかない。
でも体験できた人に方法を尋ねても、記事や本に書いてあったことが返ってくるだけ。特別なことなんてない。ひたむきに続けるしかない。
これは明晰夢に限らず。特定の技量を身につけるためには共通していることだと思う。それは小説を書くことも同じ。ある本を読んで、そのことを強く感じた。
2021年 読書#21
「書きたい人のためのミステリ入門』新井久幸 著という本。いわゆる小説の指南本なんだけれど、少し雰囲気がちがう。小説作法の本というのは、作家が自らの経験に基づいて執筆することが多い。
でもこの本の著者は、新潮社の現役編集者をされている方。編集者の目線で書かれた小説のノウハウ本というのは珍しい。昨年の暮れに出版されたとき、ネットで噂を聞いて絶対に読もうと思っていた。そして想像していたような素晴らしい内容で、とても勉強になった。
ただし、ボクにとって目新しいことはない。編集者としての意見は強く心に響いたけれど、小説のノウハウとしての部分については、ボク自身が常に意識していることばかり。
そうしたノウハウは過去に読んだ本で仕入れたものだけじゃない。もっとも大きいのはできる限り多くの本を読むこと、そしてできる限り多くの小説を書くことで感じてきたもの。必死でもがきながらも、どうにか得てきた自分なりのノウハウだと思う。
でも悔しいかな、先ほどの明晰夢の事例と同じ。『知ってる』と『できる』のあいだには、とてつもなく高い壁がある。わかっていてもできないことってあるよね。負け惜しみかもしれないけれど、これはボクの本音。
だから結論としては、見つけたノウハウを根気よく続けていくしかない。1冊でも多くの本を読み、1作でも多くの小説を書く。この本でも著者が述べておられたけれど、とにかく『完成』させることが大切とのこと。ボクもその意見には全面的に同意する。
まずは作品を最後まで完成させないと、『知ってる』ノウハウをいかせているかどうかさえわからない。しっかり最後まで書いて『了』の文字を入力した段階で、ようやく推敲という作業が始まる。この推敲、あるいは改稿という作業によって、『知ってる』が『できる』へと変容していくんだと思う。
もし小説を書いてみたいと思う人がいたら、この本はオススメ。ミステリはすべての小説の基本だから、ジャンルに関係なく勉強になるはず。ボクもこの本にもっと早く出会いたかったなぁ。この本に書かれているノウハウを体感するまで、どれだけ時間がかかったことか。でも無駄な時間じゃなかったけれどね。
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