日本文化への歩み寄りに好感
欧米の人たちにとって、アジア人というのは区別がつきにくい。日本、中国、韓国のちがいを明確に理解している人は少ないだろう。だからハリウッド映画によっては、違和感しかない変な日本を見せられて興醒めすることがある。
そんな日本文化へ果敢に挑戦した映画を観た。久しぶりに鑑賞したけれど、突っ込みどころの多さに呆れつつも、日本文化への精一杯の歩み寄りを感じられる作品だった。
2021年 映画#65
『ラスト サムライ』という2003年のアメリカ映画。有名な作品なので説明する必要ないね。トム・クルーズ主演で、日本からは渡辺謙さんや真田広之さんが出演したことで話題となった。この映画で渡辺謙さんはアカデミー賞の助演男優賞にノミネートされ、ハリウッド進出を果たした。
初めて観たときはこの物語の世界観に少しイラッとした。それは無理な設定が目についたから。トム・クルーズが演じたオールグレンは、幕末に榎本武揚率いる旧幕府軍に参加して函館で戦ったフランス人のジュール・ブリュネがモデルらしい。
そして渡辺謙さんが演じた勝元は、西南戦争を起こした西郷隆盛がモデルだろう。『ラストサムライ』というタイトルからも、西南戦争を意味していることがわかる。ただし日本最後の『侍』を強調するあまり、舞台設定としてかなり不自然なことになっている。
もし西郷隆盛がモデルだとしても、あの当時の武士たちが鎧兜で戦うわけがない。戦国時代と幕末の武士がごちゃ混ぜになっている。戊辰戦争で幕府軍と戦った薩摩の西郷隆盛たちは、最新式の武器で幕臣たちを圧倒したんだからね。そこからして矛盾している。
そのうえ勝元たちを暗殺しようとして忍者が登場する。この場面ではほとんどの日本人が失笑するだろう。日本人スタッフは反対したのに、どうしても忍者を登場させたいというアメリカ側の意向だったらしいwww
ただ『武士道』という精神面に関しては、日本文化への歩み寄りに好感が持てた。この点に関しては大成功だったと思う。今回じっくりと見直してみて、さらに強くその想いが伝わってきたような気がする。
まぁ、所詮はフィクションだということ。現実問題として明治の世になってあんな隔離されたような集落で暮らすのは無理。このあたりの感覚も、やはりアメリカ人だなぁと思ってしまう。基本的に日本は多民族国家ではないからね。
エンタメ作品としては本当に面白い。久しぶりに観ても、戦闘シーンの迫力に圧倒された。特に真田広之さんの殺陣は素晴らしい。あれは日本人の俳優さんだから、それも真田さんだからできたことなんだろうな。そして無口な福本清三さんも最高だった。彼は時代劇に欠かせない俳優さんだよね。
ブログの更新はFacebookページとTwitterで告知しています。フォローしていただけるとうれしいです。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。