ホームレスをゴミ扱いする街
排他主義ほど怖いものはない。多様性を否定して、自分たちにとって範疇外の人間を排除することになるから。第二次世界大戦中のドイツのナチスがやったこと、中国共産党がチベット人やウイグル人たちにやったことも同じ。
そしていま欧米でアジア人に対して起きているヘイトクライムも、いつまでも消えることのない人種差別が根底にある。特に国家や民族が入り乱れているヨーロッパにおいて、そうした排他主義が顕著だと感じられる。昨日、ある記事を読んで背筋が寒くなった。
ホームレスを減らしたいスイス。片道のヨーロッパいき切符を無料で提供し国から出て行ってもら政策を実施
説明のいらないタイトル。だけどそこには人間が本能的に有している排他性を見ることができる。
2008年の世界金融危機以来、スイスにヨーロッパ各地からやってきたホームレスが増えているらしい。そこでホームレスを減らすため、一定期間スイスに戻ってこないという条件付きで、ヨーロッパの他の都市への片道切符を渡すというプログラムが実施されている。
安易だけれど、わかりやすい発想だよね。よそ者は出ていけ。だけど金がないだろうから、戻ってこなければ切符代を出してやる、ということだろう。
スイスの司法スポークスマンはこう語っている。
『これまで、ベルギーから来たホームレス7人、ドイツから7人、イタリアから2人、ルーマニアから14人を含む計31人が、無料片道切符の提供を受け入れました。しかし、片道切符を提供されたにもかかわらず、契約に違反しているホームレスを発見した場合、彼らは国外追放される危険があります』
こうしたやり方に非難する市民は多いとのこと。ストリート・クレンジング（街の清掃）と揶揄され、「行き場のないホームレスたちの管理責任を放棄している」といった非難の声が上がっている。
ところが驚いたことに、こうした政策をとっているのはスイスだけじゃない。イギリスでも同じことが行われているとのこと。2015年以降、バスや鉄道、飛行機を含む6810枚の片道切符がホームレスの人々に提供された。そしてホームレスたちが自主的に受け入れたとコメントしている。
だけどこのプログラムを使った人は、「今までに行ったことのない場所への片道切符を提供され、選択の余地を与えられないように感じた」と述べているそう。ホームレスという立場を考えたら、そうせざるを得なかったのが実状だという気がする。
ただ行政の立場にすれば、ホームレスを減らすことは難しい。シェルターや職業の斡旋をしたくても、物理的にも経済的にも限界がある。そして本人にその気がなければうまくいかない。
そうなってくると、こうした強制的な方法を選択するしかないのかもしれないね。でもその根底には、仲間以外を認めないという排他主義があると思う。これは日本人だって同じ。田舎へ移住してきた都会の人たちに対して、地元の人があからさまな嫌がらせをするという事例がある。それだってある種の排他主義だろう。
ホームレスをゴミ扱いするなんて容認できないけれど、ボクたちの心の奥にはそうした行為に走ってしまう本能が存在しているんだろう。そんなことを感じさせられる記事だった。
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