このバトルを映像で見たかった
原作に惚れ込んで、ずっと観たかった邦画がある。サブスクリプションでの配信を待っていたところ、ようやく今月になって新着作品として登場した。
ボクの感覚ではバトルものといっていい作品。といっても戦いに使うのは銃でも剣でもなく、美しい音色を放つピアノ。国際コンテストにおけるピアニストたちの壮絶な競い合いと友情を描いた物語。
2021年 映画#68
『蜜蜂と遠雷』という2019年の日本映画。原作は恩田陸さんの小説で、直木賞と本屋大賞をダブル受賞した作品。この映画をこれから観ようと思っている人は、まず原作を読んだほうがいいと思う。本当に素晴らしい小説で、この物語の世界観をしっかりと心に刻みつけることができるから。
読み出したら夢中になって止められなかった。恩田さんは書き始めるまで数年かかったとのこと。それほど苦労された力作。ピアノコンテストに何度も足を運ぶことで緻密な取材を重ねられていた。ダブル受賞は当然だと思う。
この小説が映画化されることを知ってから、ずっと気になっていた。あの登場人物たちがどのような姿を見せてくれるのか。そのことを考えるだけでワクワクが止まらない。そして映画を見終わった感想として、ボクの期待をはるかに上回る素敵な登場人物たちだった。
新しい映画なのでネタバレはやめておこう、主要な登場人物だけ紹介しておこうかな。
栄伝亜夜(えいでん あや):20歳。天才少女として5歳からデビューしていた。だけどピアノの師匠とマネージャーを兼ねていた母が13歳の時に急死して、ピアノが弾けなくなってしまった。彼女にとってこのコンクールは、自分を取り戻す最後のチャンスだった。
風間塵(かざま じん):16歳。音楽学校も演奏歴もなく、さらに自宅にピアノさえない少年。ところがピアノの大家であるホフマンに見出され、この大会における刺客として送り込まれる。
マサル・カルロス・レヴィ・アナトール:19歳の天才ピアニスト。ジュリアード音楽院在学中で、今回の大会の優勝候補。亜夜とは幼なじみ。
高島明石(たかしま あかし):28歳。かつては国内のコンクールで入賞したこともあるが、家庭を持ってサラリーマン生活をしている。音楽家としての道を諦めきれず、この大会に自分の音楽人生をかけている。
という4人がメインキャスト。コンテストは一次、二次選考を経て、最終選考が実施される。最終選考ではオーケストラをバックに演奏する。誰がその選考に残り、結果がどうなったかは原作か映画をご覧あれ。
ボク個人として好きなキャラは高島。年齢制限ギリギリで挑戦する彼の姿は、50代になってから小説を書いているボクとダブって見てしまうからかな。だからつい応援してくなってしまう。この高島を演じていたのは松坂桃李さん。うん、原作のイメージ通りにぴったりのキャストだと思う。
そして演技の素晴らしさに感動したのが、亜夜を演じた松岡茉優さん。過去の闇に苦しみながらも、常に天才としての空気感を醸し出していた。そして過去を吹っ切った瞬間、取り憑かれたようにピアノの鍵盤を叩く姿に感動した。いやぁ、素晴らしい女優さんだよね。
こうして映画を観ると、もう一度原作を読みたくなってきた。最高のバトルだったなぁ。
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