亡命は祖国を見捨てることじゃない
昨日、中国を旅するという番組を見ていた。5年前の映像で、マスクをせずに大勢の人が交流していることに違和感を覚えると同時に、普通だったことが大きく変わってしまったことに少し悲しくなった。
そうしたコロナ禍も大変だけれど、いまの中国が直面しているのは人権問題。ウイグル人弾圧に抗議するため、冬の北京五輪をボイコットする動きが起きている。さらに香港や台湾問題も抱えていて、中国政府の行動が世界的な紛争の火種となりかねない状況になっている。
だけど旅番組を見ていて感じたのは、中国の人たちを個人単位で見た場合にそんな空気を感じないということ。とてもフレンドリーで親切。もちろんテレビでは隠されている部分が多いだろうけれど、隣国として中国の人たちと仲良くしていきたいなぁと本気で思った。
でもそれが国家単位になると、急に緊迫したものに変わってしまう。特にこんなニュースを見ると、やっぱり中国は中国なんだと感じてしまう。
「周庭さん、6月12日に出所」香港メディアが報道。デモ扇動の罪などで収監されていた
香港の民主活動家・周庭(アグネス・チョウ)さんが今日にも刑務所から出所するかもしれないとの記事。昨年の12月にデモ扇動の罪で10ヶ月の禁固刑を受けていた。周さんは模範囚だったそうで、刑期を短縮して出所するとの見込みらしい。
予定どおりに出所することになれば、世界的に報道されることになるだろう。彼女の言動や動きは、香港の民主運動の象徴として世界が認めているから。リンク先の記事によると、刑務所生活が心身ともにキツかったので、しばらくは休養するとのこと。
ボク個人的には、出所した機会を逃さずに中国から亡命したほうがいいと思う。おそらくそう思っている人は多いだろう。だけど周さんの立場に立ってみると、そう簡単に亡命を勧めることはできないような気がする。
そもそも香港という祖国を愛しているからこそ、民主化運動に身を捧げていたんだと思う。その心理的な背景にあるのは、ずっと愛する香港で暮らしていきたいという想いのはず。
だから香港に在住したままで、自分の祖国を変えたいと願っておられるように思う。ただし家族や友人もいるし、法律が改正されて以前のように活動できる環境ではなくなってしまった。今後の言動や行動によっては、もっと重い罪を課せられる可能性もある。
気になるのは刑務所でどのような思想改造を受けたかということ。もし暴力まがいの洗脳でもされていたら、以前の彼女ではなくなっているかもしれない。偏見かもしれないけれど、中国の刑務所だというだけでそんなことを想像してしまう。
もし亡命するとしたら、周さんにとって香港を変えていける見込みがある場合だけかもしれない。亡命先の国家の協力が得られて、香港民主化の活動に関して安全面を含めて支援してもらわなければ、国外に出ようとは思わないような気がする。おそらく日本では無理だろう。
だけどその可能性がどこかの国にあるのなら、思い切って亡命されるべきかもしれない。いまの中国はそう簡単に変わらない。香港に関してはすでに手遅れの感が強い。だから国外でしか活動できないとしたら亡命という選択肢もありだと思う。
祖国を変えたいという志があるかぎり、亡命は自分が生まれ育った国を見捨てることじゃないと思う。
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