さすがのキャラ設定にワクワク
尊敬する作家の名前をあげたらキリがない。だけどボクのなかでベスト3から絶対に外せないのが宮部みゆきさん。
そんな尊敬する宮部さんが、以前から書きたいと考えられていた捕物帖をスタートさせた。シリーズ化が決まっているようで、その第一弾を読んだ。そしてあっという間にこの物語の虜になってしまった。その理由はさすがとしかいえないキャラ設定。いやぁ、まじで勉強になるなぁ。
2021年 読書#72
『きたきた捕物帖』宮部みゆき 著という小説。江戸時代の深川を舞台にした時代小説で、丁寧に当時の地図まで閉じられている。だから物語がフィクションの枠を超えてリアリティを主張してくる。4つの短編集的な構成となっている。実際は続いている物語だけれど。
『ふぐと福笑い』
『双六神隠し』
『だんまり用心棒』
『冥土の花嫁』
という4つの作品。ボクがいま大好きで追いかけている『しゃばげ』シリーズと似た雰囲気を持っている。妖怪は出てこないけれど、主人公が遭遇する不思議な事件を解決していくという内容。これから読む人もいるのでストーリーは割愛する。とにかく素晴らしいキャラだけを紹介しておこう。
物語の発端は、深川を仕切っている十手持ちの千吉親分の急死で始まる。なんと死因はフグの毒にあたったというもの。千吉親分は文庫屋も兼業していて、大人気の文庫を販売していた。文庫というのは江戸時代の小物入れのようなもの。これが重要な前提。
北一:この物語の主人公。16歳で千吉親分の弟子の下っ端。岡っ引きの手伝いはしたことがなく、文庫を売り歩くのが彼の仕事。
松葉:千吉の妻。子供のころの病気で盲目。だけどそれゆえ千里眼のような鋭さを持っている。
おみつ:松葉の元で働く若い女中。
富勘:千吉親分と昵懇だった深川の差配人。
喜太次:北一と同世代。行き倒れになっていたところ、風呂屋の老夫婦に救われて釜炊きをしている。謎だらけの人物。
これ以外にもレギュラー陣が大勢いる。このまま連続ドラマにできそうなユニークなキャラばかり。ここで紹介したのが、主人公の北一を助けてくれる人たち。
千吉親分の弟子たちはイマイチで、十手は誰にも渡してもらえない。見込みのあるのは末弟の北一だけ。だけどまだ岡っ引きの実績がない。つまり北一は文庫売りをしながら様々な難事件を解決していき、やがて本物の十手持ちになっていくという成長物語。
彼の後援者が千吉の未亡人である松葉であり、彼女の千里眼によって北一は助けられる。さらに富勘は北一を千吉親分の跡目に考えていて、全面的に協力してくれる。この人物たちが常に貴重な役どころで絡んでくる。
ところがなぜタイトルが『きたきた捕物帖』なのか?
それは喜太次が関係してくる。彼は武士か忍者のような能力を持っている。今回の物語でも北一を影で支えていた。だけどまだ素性は明かされていない。とにかく自分の存在を隠したいということで、普段は凡庸な釜炊きのフリをしている。
つまり北一と喜太次の友情物語であり、この二人が難事件を解決していく。だから『きたきた捕物帖』というタイトルになる。
悪人にさらわれて殺されそうになった富勘の居場所を見つけ、そしてその悪人を倒して助け出したのは喜太次。そして北一が知恵を出すことで、生まれ変わりを語る詐欺師の女性を追い詰めたのも喜太次。対照的な二人だけれど、二人で一人前というのが物語として完璧な設定だと思う。
とにかく新刊が待ち遠しい。早く『きたきた』コンビの次の活躍を読みたくて仕方ない!
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