息子の3つの願いに感動
もし3つだけ願いを叶えてもらえるとしたら、どんなことを願うだろう?
問題となるのは、それを『誰』が叶えてくれるかということ。もしその『誰』かがなんでもできる神様だとしたら、ボクは迷わず「ミューナの腎臓病を治してください」と願う。3つのうちの1つに入るのは確実。
だけど願いを叶えてくれる『誰』かが人間だとしたら、その願いは口にできない。どうしても無理なことってあるからね。
今日観た映画は、青年がある人物に3つの願いを叶えてやるといわれた。その人物とは、刑務所に入っていた彼の父親だった。
2021年 映画#117
『THE FORGER 天才贋作画家 最後のミッション』(原題:The Forger)という2014年のアメリカ映画。
レイは天才的な腕を持つ贋作画家。だけどある人物に密告されたことで、10年の刑を受けて服役していた。刑期の残りが10ヶ月なのに、彼は犯罪組織のボスであるキーガンと裏取引をすることで、判事を買収して仮釈放を受けた。なぜなら息子がガンにかかっていて、刑期を終えたら会えなくなるかもしれないから。
その引き換えに、レイはキーガンからモネの絵の贋作を作り、本物と交換することを命令される。息子のウィルは、レイの父、つまりウィルの祖父であるジョセフと暮らしていた。家に戻ってきたレイは、命の期限が迫っているウィルとの生活を全力で過ごそうとする。そのために贋作を作るしかなかった。
ユニークなのは、レイの父であるジョセフは有名な詐欺師だということ。レイの兄弟も犯罪者。つまり彼らは犯罪者一家だった。その設定が面白いことになっていく。息子との濃密な時間を過ごしたいレイは、彼に3つの願いを叶えてやると宣言する。もちろん彼に息子の病気を治すことはできないけれど。
ウィルの願いが面白い。1つ目は離婚した母に会わせてほしいというもの。そこでレイは麻薬ジャンキーの元妻を探し出し、どうにか面会を設定する。ウィルの母親も必死になって麻薬中毒であることを隠し、余命少ない息子と楽しい時間を過ごす。
ウィルは母がジャンキーだということは見抜いたけれど、最後まで素敵な母と息子という演技をして過ごした。このシーンはちょっと泣ける。
2つ目の願いはセックスをすること。ウィルはまだ童貞だった。この願いを叶えるシーンは大笑いする。さらに親子そろって警察に追われたことで、ウィルは3つ目の願いを決める。
それは父の犯罪を手伝わせてほしいというもの。父が自分のために出所したことをウィルは自覚している。そのために贋作を作って本物のモネを盗もうとしていることも。その犯罪に祖父のジョセフも協力している。
全力で犯罪に取り組んでいる二人をうらやましく思ったウィルは、自分も最後の時間を生き生きと過ごしたいと願う。それでウィルもその犯罪チームに参加することになった。祖父、父、息子の犯罪チームが結成された。
もちろん警察は黙っていないし、キーガンは悪人なのでレイが絵の取り替えに成功してもそのままで済まない。自分がハメられることはレイは自覚していた。そこで大どんでん返しが計画される。これがなかなか面白い。
最終的にキーガン一味は逮捕され、レイたちは大金を手にするけれど逮捕されない。むしろ警察に感謝されている。そしてエンディングでは、南の島でリゾートを楽しむ3人のシーンで終わる。もちろんウィルの病気は治らない。だけど彼の表情は、言葉にできない満足感に輝いていた。素敵なラストだったなぁ。
レイを演じたジョン・トラボルタはとても素敵な父親だった。ウィル役のタイ・シェリダンも少し影のある息子役にピッタリ。そんななか最高の演技を見せてくれたのが祖父のジョセフを演じたクリストファー・プラマー。彼がこの作品に参加することで、映画としての質が一気に高くなっていると思う。
さすがの名優だよね。ボクは晩年の彼しかリアルタイムで観ていない。だけど数多くの映画に出演しているので、あの素敵な笑顔が強く記憶に残っている。もちろん若い時代に出演した『サウンド・オブ・ミュージック』が彼の代表作。今年の2月に亡くなったのが残念で仕方ない。91歳だから大往生だろうけれど。
ウィルの病気の影が常に存在するけれど、父と祖父の愛がその影を最大限に明るく照らしてくれる素晴らしい作品だった。
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