仮想と現実のバランスが絶妙
ボクが体外離脱や明晰夢で過ごす世界は、ある意味仮想世界と同じ。物理法則に左右されないので、どんなことでも可能。何ができるからは、体験している人の信念次第。人間は飛べない、人間は壁抜けできない、と頑なに信じている人は制限された世界しか体験できない。その世界を楽しむためには、ちょっとした心の柔軟性が要求される。
そんな世界観が映画化された作品を観た。それは体外離脱じゃなくて、文字どおりVR(ヴァーチャルリアリティ)を使った仮想世界。VR世界と現実が複雑に絡み合い、二つの世界の絶妙なバランスによって構成された最高のエンタメ作品だった。
2021年 映画#121
『レディ・プレイヤー1』(原題: Ready Player One)という2018年のアメリカ映画。監督はスティーブン・スピルバーグで、さすがというしかない素晴らしい映画だった。
物語の舞台は2045年。科学は進化しているものの、世界は荒廃していた。極端な格差社会で、貧しい人たちは廃墟が積み重ねられたような集合住宅で暮らしている。そんな絶望しかない世界で唯一楽しめるのは、VRで構成されたゲームの世界だった。
そのゲームは『オアシス』という仮想世界で、創始者はハリデーという人物。ハリデーは故人で、とてつもない遺言を残した。『オアシス』内に隠した『イースターエッグ』を最初に発見した者には、56兆円という遺産と『オアシス』の所有権が与えられる。当然ながら大勢の人がこのゲームに参加した。
そのなかにはこの『オアシス』を運営する会社のCEOであるソレントもいる。彼は軍隊のような組織を構成して、『オアシス』に隠されている『イースターエッグ』を探させていた。そのためにはリアルな殺人だって厭わない。
物語の主人公はウェイドという若い男性。『オアシス』内のアバター名はパーシヴァル。両親を亡くして叔母が暮らすバラックに居候している。だけどVR世界では有名で、『イースターエッグ』を見つけるであろう有力候補だった。
『イースターエッグ』は3つの試練を突破して、3つの鍵を手にしなければいけない。ところが映画の冒頭では、まだ第1の試練であるレースでさえ誰もゴールまで到達できなかった。ウェイドは一匹狼で徒党を組まないけれど、大切な友人がいた。
エイチ、ショウ、ダイトウというアバター名で、やがてアルテミスという人物も仲間になる。新しい映画なのでネタバレはここまで。映画の後半ではこのメンバーが現実世界でも協力する。仮想と現実のギャップは、この映画の最大の魅力だと思う。
全体として『映画愛』に満ちた作品。映画好きな人なら興奮しっぱなしだと思う。さらに80年代のポップカルチャーに詳しい人なら、もっと楽しめるだろうと思う。BGMもいきなりヴァンヘイレンの『ジャンプ』で始まるくらいだから。
ボクがめちゃウケたのは第2の試練。なんと映画の『シャイニング』の世界が舞台だった。あの映画のセットが完璧に再現されていて、スティーブン・キングのファンならニンマリとするはず。パーシヴァルことウェイドとアルテミスの恋愛も映画の見どころかな。
とにかく映像がすごい。リアル世界でもCGが多用されていて、『オアシス』ではコンピュータ映像が駆使されてる。スピルバーグが自分の作品として、完成させるのに3番目に難しかったと嘆いていたらしい。だからこそ、二つの世界が完璧にリンクしていた。
この物語の世界観があまりに気に入ったので、さっそく原作を図書館で手配した。近いうちに読んでみようと思う。3時間近くある作品だけれど、時間をまったく忘れてしまう。続編も検討されているそうなので、公開されたら今度は映画館の大画面で鑑賞したいと思う。
ブログの更新はFacebookページとTwitterで告知しています。フォローしていただけるとうれしいです。
『高羽そら作品リスト』を作りました。出版済みの作品を一覧していただけます。こちらからどうぞ。