61時間後に何が起きるの?
小説には謎がつきもの。謎があるからこそ、読者は最後までページをくる。その謎の散りばめ方が、著者によってちがってくるので面白い。
物語を進めながら謎を小出しにすることで、小さな謎を解決させつつ、物語の根幹となる最終的な謎を投入するというパターンが多い。一方で、次から次に謎を散りばめておいて、後半にならないとまったくわからないというパターンもある。
後者の謎を放置するパターンが得意な作家として、リー・チャイルドがいる。『ジャック・リーチャー』シリーズの著者で、このシリーズはとにかく物語の前半に、これでもかというほど謎が配置される。今回読んだ作品もそうで、上巻を読んだ段階でボクの頭には謎しか残っていないwww
2021年 読書#78
『61時間』上巻 リー・チャイルド著という小説。『ジャック・リーチャー』シリーズの14作目にあたる小説。現段階で25作品がアメリカで出版されているけれど、日本で出版されているのは12作のみ。それも出版順ではなく、かなり前後して文庫化されている。
今年の8月に出版されたのは7作目なので、このシリーズがどこから読んでも楽しめるのが証明されているようなもの。ボクはこれまで5作品を読了したけれど、過去作品を読んでいないと理解できないという物語はなかった。知っているほうが、少し楽しめるという程度。
さて今回もお約束のように、バスに乗っているジャックが事件に巻き込まれる。バスといってもいつものグレーハウンドのバスではなく、老人たちの団体旅行のバスに便乗させてもらっているという不思議な始まり。冬のサウスダコタ州で、このバスはスリップ事故を起こす。そこはボルトンという小さな町で、バスの乗客たちはその町の住民たちの家にホームステイすることになった。
ボルトンは刑務所によって経済が動いている町で、モーテルは刑務所の面会者たちで満室になっていたから。いつものとおりジャックは警察に怪しまれ、一般家庭ではなく、ピーターソンというボルトン警察の副署長の家に預けられる。
そんなボルトンでは、大規模な麻薬密売事件が起きようとしていた。黒幕はプラトンというメキシコに住んでいる男。ボルトンで麻薬を密造している疑いがあって、ソルターという老女がそのやり取りを見ていた。それゆえ彼女は検察の証人として保護されることになった。
プラトンは証人であるソルターの命を狙っている。元陸軍の捜査官というジャックの経歴を知ったピーターソンは、彼にあることを依頼する。麻薬密造に使われていると見られる元軍の施設がある。見た目はコンクリートの小さな建物だけれど、どうやら地下があるらしい。
それでその施設がどのようなものか、ジャックを通じてアメリカ軍に尋ねて欲しいというもの。ジャックはそれを受け入れて調査を進めるけれど、次々に殺人事件が起きる。それは麻薬密売の事実を知る人間の口封じだった。そして証人であるソルターに対しても暗殺命令が出る。
というような上巻の内容。ところが謎ばかり。まず具体的にボルトンでどのような犯罪が起きているのか謎。元軍の施設も陸軍の記録には残っていなくて、どうやら空軍の施設だったということしかわからない。そして最大の謎は、61時間後に何が起きるかということ。
この小説の各章の最後に現在時間が記され、残り時間が計測される。上巻が終わった段階で残り19時間というところまできた。カウントダウンはしているけれど、19時間後に何が起きるのかまったくわからない。要するにこれが著者の演出であり、読者は下巻を読むしかないということだろうね。
もう一つの謎は、今回のマドンナがわからない。トム・クルーズが映画で演じたジャックとちがい、原作のジャックはいつも女性といい関係になる。毎回マドンナが登場するんだけれど、今回はいまのところそうした女性が見当たらない。ソルターとはいい雰囲気だけれど、老女なので男女の関係にはならない。
マドンナに関して、今回は謎のまま終わるのかもしれないなぁwww
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