61時間後の出来事に呆然
こんなモヤモヤしたのは久しぶり。気持ちの持っていき場所がなくて、昨晩から今日になってもスッキリしない。
それはある小説のラストが想定外のことになったから。こんな形で終わったら、読者は置いてきぼりになってしまう。
2021年 読書#80
『61時間』下巻 リー・チャイルド著という小説。上巻の感想については『61時間後に何が起きるの?』というブログに書いているので参照を。
トム・クルーズの主演で知られる『ジャック・リーチャー』シリーズの原作を追いかけている。この手の作品は主人公が窮地に追い込まれながらも、悪党がやっつけられて事件が解明される。それでスッキリとするのが常道。このシリーズの過去作品もそうだった。
ところがこの『61時間』はちがった。上巻からずっとカウントダウンをしていて、61時間後に何が起きるのかハラハラドキドキしていた。そしてたしかにとんでもないことが起きた。だけど……。
まず空軍が冷戦時代に作って忘れ去られた地下施設の秘密はわかった。核戦争が起きたときのために、難民となった子供たちを収容するための施設だった。だけど使うことなく空軍の資料からも消えてしまった。残されたのは大量の備品だけじゃない。なんと兵士が戦地で戦うために服用させる大量の覚醒剤が置き去りになったままだった。
メキシコ在住の黒幕であるプラトンは、その覚醒剤を手に入れることが目的。ただそのやりとりをソルターという老女に見られたことで、証人保護の対象となっている彼女を殺そうとしていた。
結果としてジャックはソルターの保護に失敗する。警察内部に裏切り者がいたことで、彼女は殺されてしまう。さらにジャックが頼りにしていたボルトン警察の副署長も同じ人間に殺されてしまった。ネタバレすれば、裏切り者は警察署長のホランドだったというオチ。
最終的にジャックはホランドを殺し、ジェット機でやってきたプラトンと相対する。ホランドの顔を知らないプラトンは、ジャックをホランドだと思い込む。そんなプラトンは覚醒剤の買い手である謎のロシア人を騙そうとしていた。それがバレていたことで、プラトンはロシア人に命を狙われていた。
ということで61時間経過したときに起きたこと。それはロシア人に買収されたプラトンの部下が、覚醒剤の隠し場所にに入ったジャックとプラトンを殺そうとした結果、なんとジェットエンジンの燃料を地下に流し込み、発煙筒で火をつけてしまった。
それで大爆発を起こしたのが61時間後。軍のレーダーにも捕捉されて、ロシアによるミサイル攻撃の可能性も検討されたほどの大爆発だった。もちろん覚醒剤は消えてしまい、プラトンの遺体さえ出てこない。ロシア人は謎のままで、ジャックの生死は不明。そして下巻だというのに(つづく)で終わっていた。
つまり完結していない。訳者の解説を読んだけれど、この後の出来事はまだ執筆されていないらしい。物語は継続しているので、ジャックが生きていることはわかる。ただ何も解決しないまま物語が閉じているので、気持ち悪いことこのうえない。
もしかした未翻訳の作品に続編があるのだろうか? 調べてみたけれど、いまのところはわからない。いつかわかるだろうけれど、モヤモヤした気分が抜けなくて困っているwww
唯一の救いは、ジャックに恋の兆しが見られたこと。軍に関する調査をしたとき、ジャックを助けてくれたのはスーザン・ターナーという陸軍少佐。互いに結婚していないことを確認しているくらい、お互いの気持ちに気づいている。事件が片付いたら会いに行く、とジャックはスーザンに電話していた。
映画のジャックファンの人なら、スーザン・ターナーという名前を知っているはず。『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』という作品でトム・クルーズ演じるジャックが、世話になったからといって映画の冒頭で会いに行く人物がこのスーザン。
ジャックが陸軍本部に到着すると、スーザンは国家反逆罪で逮捕されていて、それを助けるというのがこの映画のストーリー。ということで『61時間』の結末は一度忘れて、ジャックとスーザンの恋の行方を楽しみにして原作を読み続けようと思う。
だけど『男はつらいよ』の寅さんとリリー(浅丘ルリ子さん)のように、愛し合っているのに二人は結ばれないような予感がするけれどね。
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