幸福と不幸はどこが違う
今月中旬に締め切りだったある文学賞に小説を投稿した。ネットでも応募できるので、迷わず便利なネット応募を使った。ただ送信したと同時に少しサイトの挙動がおかしくなり、投稿確認のメールが2通も届いてしまった。
無事に届いたのだろうか? そんなことを思うだけで不安になって、もしかしてやらかしてしまったかも、という不幸な気分になってしまった。といってこの手の文学賞で不必要な問い合わせは厳禁。だからモヤモヤしたままでここ数日を過ごしていた。
今日その文学賞のサイトを見ると、原稿を添付できないという不具合が起きていたらしい。そして16日中という期限付きで、思い当たる人はメールを送信してほしいとのこと。ということでモヤモヤ気分をどうにかするため、この機会を利用させてもらった。
すぐに返信が返ってきて、ボクの原稿は無事に届いていたとのこと。通常、こんなことを確認できることは少ないので感謝しかない。とにかくホッとすると同時に、一気に幸福感に包まれた。人間なんていい加減なものだよねwww
幸福と不幸はどこかちがうのだろう? 今日のことを考えながら、すぐに読了した本を思い出した。そこにその答えが書かれていたから。
2021年 読書#89
『雨の日も、晴れ男』水野敬也 著という本。水野さんといえば200万部を超えるベストセラーとなった『夢をかなえるゾウ』が有名。ボクはその作品も、そして続編も読んだ。大笑いしながらも、心に大切なものが刻み込まれる小説だった。もし読んだことがない人がいたら、是非とも手にとって欲しい。
その水野さんの著作。これまた人生への深い含蓄に富んだ作品。そして『夢をかなえるゾウ』と同じく、爆笑に継ぐ爆笑で最後まで読み進むことになる。登場人物のボケが想定外の方向から飛んでくるので、不意をつかれてびっくり箱のような笑いになってしまう。
最初は神様が登場する。ゼウスの小さな子供たちが二人。いたずら好きの神様で、幸せそうな人間を見つけて不幸にしてやろうとする。特定の人間の運命を強制するノートがある。そこに書き込むことで、その人にそのとおりのことが起きる。
ターゲットになったのは、妻と幼い息子と暮らしているアレックスというイギリスの男性。最初は目覚まし時計が壊れる、といういたずらからスタートする。やがて上司に叱られる、仕事で失敗する、会社をクビになるというところまでエスカレート。
さらに知らない男に殴られる、家が火事になる、大切なものをすべて失う、という恐ろしいことまで書き込まれた。普通の人間なら最後の段階に至るまでに不幸のどん底で生きる気力を失くしてしまうだろう。
ところがアレックスはちがう。何が起きても、自分にとって前向きなこととしてとらえる。ある意味ちょっと変だと感じるほど。だから小さな神様たちは、アレックスの態度を見て困惑するばかり。不幸にするのが目的なのに、彼はどんな状況でも笑顔を忘れない。それどころか他人を助けたり笑顔にしようとしている。
このあたりはネタバレしたら面白くないので、ぜひとも読んで欲しい。マジで笑うから。そして少しずつアレックスに感化されていく小さな神様たちの心の動きが興味深い。最終的にはこの二人は地上に降り立つ。
さてアレックスの人生はどうなってしまうのか?
その答えは置いとくとして、小さな神様が学んだことを紹介しておこう。二人の目的はアレックスを不幸にすること。だけど失敗したことで、とても大事なことに気がついた。
『神は、人を不幸にすることも、幸福にすることもできない。ただ、出来事を起こすだけ』
ボクはこの文を読んで激しくうなずいた。まさにそのとおり。なんて深い言葉なんだろう。
不幸や幸福というのは、その本人がどう感じるかに左右される。ある出来事が客観的に不幸だと感じることでも、それを体験している人間によってはちがうものへと変化する。人生における幸不幸は、自分がどう思うかにかかっている。
つまり幸福と不幸にちがいなどない。ボクたちがどう感じるかということ。そのことをとてもわかりやすく書かれた、最高に楽しくて素敵な物語だった。
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