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高羽そらさんインタビュー

武士道より強いもの

ボクは小学生のときに剣道を習っていた。最初は小学校の体育の服装でスタート。竹刀さえ持たせてもらえない。初めに教えられたのは道場に入るときに礼をすること。もちろん出るときも。とにかく礼節について徹底的に仕込まれた。

 

やがて竹刀を振れるようになり、袴や道着を身につけると気分が高まってくる。初めて面や小手の防具をつけたときの興奮はいまでも覚えている。だけど常につきまとっていたのは礼節。ボクは道場に通い始めてすぐのころ、師範にこっぴどく叱られたことがある。

 

それは竹刀を足でまたいでしまったから。竹刀とはいえ、刀は武士の魂といわれているもの。いまでこそ怒られて当然だと思うけれど、その当時はそんなことも知らなかった。でも礼節を仕込まれたおかげで、何時間正座しても大丈夫になったし、それ以外にも貴重な経験をさせてもらったと感謝している。

 

そんな剣道の礼節の根幹にあるのは武士道と呼ばれているものだろう。その武士道についてくわしく書かれた本を読んだ。

 

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2021年 読書#96

『武士道』新渡戸稲造 著という本。著者の新渡戸稲造さんは、以前の五千円札の肖像となった人物。幕末に生まれて昭和の初めまで教育者、思想家として活躍された。この人が武士道について書いたというのは、なかなかに興味深い。

 

なぜなら新渡戸さんはクリスチャンだった。その彼が武士道について事細かに語っている。そのうえこの著作は日本語ではなく英語で書かれた。1899年(明治33年)にニューヨークで発刊されている。そこからドイツ語、フランス語に翻訳されて、世界的なベストセラーとなった。

 

日本が日清戦争に勝ったことで、世界的に注目されていたから。なぜ日本が鎖国を廃止してから30年ほどでここまで変化してきたか。そのことを知りたい欧米人が手にしたらしい。だから日本語に翻訳されたこの著作は逆輸入のような作品。

 

体系的に武士道について書かれていて、少し文章は難しいけれど、武士たちがどのような想いを持って生きていたのかを学べた。おそらく日本人の心のどこかには、この武士道の残滓があると思う。だから現代人が読んでも心に響くものがあるはず。

 

ただボクとしては、この武士道が日本人の根底にある思想だとは思えない。なぜなら武士階級というのは、江戸時代においては人口の7%だった。日本人口の85%は農民たち。つまり武士階級なんてマイノリティでしかない。

 

政治を動かしたり、歴史に名を残す人物が武士なので、どうしても日本人の思想を代表しているように思われてしまう。だけどボクは誤解だと思う。日本には武士道よりもっと強いものがある。

 

それは農民が持っている『我慢強さ』と『したたかさ』。封建時代に武士たちの暴力に耐えながらも、必死で生き抜いてきた。そんな農民たちにとって武士道なんて意味を持たない。日本人の心の奥深くにあるのは、農民が有していた『我慢強さ』と『したたかさ』だろう。

 

『七人の侍』という映画がその事実を象徴している。農民のために立ち上がった侍たち。腹一杯飯が食えるという条件だけ。相手は同じような武士崩れの荒くれ者。両者が死闘を繰り広げることで、その小さな村はどうにか生き残ることができた。

 

侍たちのほとんどは戦死してしまう。結局生き残ったのは農民たち。この映画のラストでも、「勝利したのは百姓たちだよ」という意味の言葉を主人公がつぶやく。武士道はかっこよくて美しい。だけど日本人の心に流れているのは、何があっても最後まで生き抜く農民たちの強さだと思うなぁ。

 

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高羽そら|たかはそら(作家、小説家)プロフィール

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高羽そら(たかはそら)
今後の目標:毎年1つの物語を完成させたいと思います。
生年月日:昭和37年5月10日
血液型:A型
出身地:京都市

【経歴】
1962年京都市生まれ。数年前に生活の拠点を神戸に移してから、体外離脱を経験するようになる。『夢で会える 体外離脱入門』(ハート出版)を2012年1月に出版。『ゼロの物語Ⅰ〜出会い〜』、『ゼロの物語Ⅱ〜7本の剣の守り手〜』、『ゼロの物語Ⅲ〜次元上昇〜』の3部作を、2013年7月〜12月にかけて、オフィスニグンニイバよりAmazonのKindleにて出版。現在も新たな物語を執筆中。

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