記憶を消す薬が開発中
人間の記憶は本当に不思議。歳を取ってくると、顔はわかっているのに俳優さんやミュージシャンの名前が思い出せなかったりする。その一方で、まったくどうでもいいような子供の時代のことを明確に覚えていたりする。
他愛のない出来事ならまだしも、トラウマとなるような記憶を消してしまいたいと思っている人はいるはず。そこまで深刻でなくても、できれば忘れたいという記憶の一つや二つは誰もが持っているだろう。
近い将来、必要のない記憶を消せる薬が完成するかもしれない。
記憶喪失の原因となるタンパク質を特定！ トラウマを消す薬ができる可能性も
リンク先の記事は、イギリスのケンブリッジ大学による研究結果をまとめたもの。実は2004年に記憶を消す薬が開発されていたらしい。プロプラノールという薬で、マウスを使った実験で記憶の消去が確認されている。
ただこの薬の効果は不安定で、確実に記憶を消すことができない。そこでケンブリッジ大学では、プロプラノールが作用しているときに脳内でどんなことが起きているかを調べた。
その結果、シャンクというタンパク質の関与がわかった。シャンクは脳のシナプスにある受容体の足場を支えている。プロプラノールが効いているときは、脳細胞でこのシャンクが分解されていることがわかった。
わかりやすくいえばシャンクは浴槽の栓のようなもので、シャンクが分解することで記憶が流れ落ちてしまうらしい。この仕組みがわかったことで、脳における特定の領域のシャンクを分解することができれば、その領域に関わる記憶を消すことが可能になる。
まだ時間はかかりそうだけれど、仕組みがわかったことで一気に研究が進むかもしれない。そうすれば記憶を消す薬が処方されるようになるかも。もっとも期待されているのはPTSDやトラウマの治療。患者を苦しめている記憶が消えることで、普通の生活に戻れるかもしれない。
でも同時に問題もある。記憶を消す行為が、犯罪に使われる可能性を否定できない。映画の見過ぎかもしれないけれど、犯罪の目撃者の記憶を消すことで証人としての価値を滅失することができる。
あるいは特定の人間を記憶喪失にすることで、犯罪の証拠を隠滅することも可能になる。悪用する方法を考えたらキリがないほど。最大の難関は、特定の記憶が存在する脳の領域を確定することだろう。これができないと、必要とする記憶まで消えてしまうことになる。
どちらにしても厳格なガイドラインを設けないと、絶対に使えない薬だよね。まだSF世界のような段階だけれど、いずれは実用化されるだろう。そうなると人間の記憶の不思議が解明されるかもしれないなぁ。
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