今日の英国は明日の日本
まずはゾッとする写真から。撮影されたのは今月のロンドンで、たったいま起きていること。
この写真はNHKが報道した記事から抜粋したもの。ロンドンのスーパーで、陳列棚の壁が見通せてしまうようなことが起きている。この状況は、昨年の日本で起きたようなコロナ禍の買い占めによるものじゃない。商品は十分にある。だけど届けてくれる人がいない。
その原因はイギリスのEU離脱。今年1月にEUからの完全離脱を受けて、移民に対する規制が厳格化された。だからこれまで低賃金で働いてくれていたドライバーたちがイギリスで働けない。ビザの取得が難しくなり、英語力も高いものが求められるようになったから。
つい先日まで話題になっていたのは、イギリスのガソリン不足。ガソリンスタンドに長蛇の列ができて、顧客同士が争うような事態が起きていた。これもガソリンを運んでくれるドライバーがいないから。
ガソリンやスーパーの商品だけでなく、ワクチンの配送も滞っているそう。とにかく物流が麻痺している状態で、国民の生活に大きな影響が出ている。業界団体は移民規制を緩めるよう、ジョンソン首相に要望している。
だけどEU離脱の主要目的が移民規制だったから、その要望は無視されている。ドライバーの賃金を上げるなどの処置を施すことで、どうにか国内での人材育成を進めようとしている。現状を見ていると、それがうまくいくとは思えないけれど。
ヨーロッパの移民問題はたしかに深刻な様相を見せている。EUに所属する国でも、移民排斥の声が高まっている。先日観たフランスが舞台の映画も、そのテーマを扱っていた。
テロの黒幕の目的はフランス国立銀行の暗号通貨。だけど移民に反対している右翼団体の本部を爆破することで、国民の暴動を誘発した。その混乱に乗じて銀行を襲うという計画。それほど移民問題は国民の意見を分裂させているということだろう。
とにかくイギリスの現状は、日本の未来を示唆している。日本は高齢化社会にどっぷりと浸かっていて、働ける世代が確実に減少している。だけど移民に対しては消極的で、労働力の喪失に関してなんらかの対策を取っているように思えない。
少子化対策をしたところで、すぐに効果なんて出ない。いまの日本において労働力を確保するなら、移民に積極的になるしか方法がないと思う。人間に代わって働いてくれるロボットやAIが開発されたら別だけれどね。まだそこまでは無理そう。
もちろん移民を受け入れるということは、いまのヨーロッパが直面している問題に日本も向き合う覚悟がいる。治安や防犯、あるいは宗教的な配慮等、検討すべき課題がいくつもある。移民に反対する人たちへの対応も必要。う〜ん、いまの日本には手に負えそうにない気がする。
だけど放置していると、いずれ先ほどの写真のようなことが起きてしまう。物流は経済の要だから、日本政府はイギリスの現状を自国のこととして検討するべきだと思う。
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