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高羽そらさんインタビュー

アメリカ版『万引き家族』

ある映画を観て、『万引き家族』という映画を思い出した。といっても『万引き家族』より2年前に公開されている作品なので、そちらのほうがパイオニアなのかもしれない。

 

ただ日本の『万引き家族』とは子供たちに教えていることがちがう。その徹底した方針に現実離れしたものを感じつつも、不思議な魅力に引き寄せられた。そして気がついたら、全力でその家族を応援していた。

 

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2021年 映画#155

『はじまりへの旅』(原題:Captain Fantastic)という2016年のアメリカ映画。

 

ベンという父親と6人の子供たちの物語。ベンと妻のレスリーは、資本主義とアメリカ人の生き方に幻滅していた。それで都会から離れ、ワシントン州の奥深い森で暮らしていた。その教育方針は徹底していて、度肝を抜かれる内容。

 

まずはサバイバル。どんな環境にあっても一人で生きていけるよう、徹底的に肉体を鍛えている。狩りもやれば、戦闘訓練もやっている。だから幼い子供でも武器の使い方に習熟していた。アメリカの特殊部隊並みのトレーニングを日々積んでいる。

 

勉強もすごい。小学生でも最新の物理理論を語っている。長男は父親に内緒で受けた大学の試験において、アメリカのほとんどの難関大学から合格通知を貰ってるほど。ただし政治思想には両親の偏見が押し付けられている。

 

素晴らしいのは音楽活動。家族の全員が楽器を使うことができ、即興で音楽を演奏したり歌える。問題となるのは、子供たちが社会から隔絶されていることで、通常の生活が困難になっている。

 

映画の後半になってわかるけれど、森での生活は子供たちのためだけではなかった。ベンの妻のレスリーは末っ子を出産してから心を病んでいた。双極性障害に苦しんでいて、森で暮らせば妻の病気が治癒するかもというベンが期待したから。だけど結果として妻のレスリーは自殺してしまう。

 

ここから物語が急展開する。一人娘のレスリーの葬儀を仕切るのは彼女の両親。子供たちにとって祖父母にあたる。レスリーの父親はベンが葬儀に来ることを拒む。変人として嫌われていて、もし娘の葬儀にきたら警察に逮捕させる、と脅す。

 

ところがレスリーは仏教徒で、死後は土葬ではなく火葬することを望んでいた。そして遺骨は見晴らしのいいどこかのトイレに流して欲しいというもの。だけどレスリーの両親はキリスト教式の葬儀を執り行う。

 

ということでベン、そして子供たちは行動に出る。レスリーの遺体を墓から盗み出し、遺言どおりに火葬しようとする。だけど妻の実家に向かう途中の旅で、子供たちは自分たちが社会から隔絶されていることに気づく。そしてレスリーの父親の親権裁判によって、ベンは子供たちを奪われてしまう。

 

この映画のいいのはここから。なんと子供たちは父親の元へと脱走してきた。そして計画どおりにレスリーの遺体を掘り返し、彼女の希望どおりに火葬する。そのとき一家でレスリーの大好きだった曲を演奏して歌うシーンがある。

 

ボクはこのシーンで号泣。背景が美しく、子供たちのハーモニーに心が震えた。違法だとか、犯罪だということを忘れてしまう。そんなことどうでもいい。だってレスリーが望んでいたことで、彼女は愛する夫と子供たちに見送られているんだから。

 

レスリーの遺骨をトイレに流すシーンも最高だった。最初は緊張しているのに、トイレの水を流したとたん全員が笑い出す。この場面に葬儀の本質があるようにボクは感じた。普通の人は非常識だと非難しそうだけれど。

 

最終的に子供のことを考えたベンは、スクールバスがやってくる場所に引っ越す。そして子供たちは普通の学校に通う。勉強は必要ないだろうけれど、社会生活を身につけるためだろうね。とても不思議だけれど、ずっと心に残る作品だった。

 

父親のベンを演じたヴィゴ・モーテンセンは最高の演技だった。『ロード・オブ・ザ・リング』のアラゴルンや『グリーンブック』のトニー・リップに負けない、彼の代表作といえる映画だと思う。

 

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高羽そら|たかはそら(作家、小説家)プロフィール

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高羽そら(たかはそら)
今後の目標:毎年1つの物語を完成させたいと思います。
生年月日:昭和37年5月10日
血液型:A型
出身地:京都市

【経歴】
1962年京都市生まれ。数年前に生活の拠点を神戸に移してから、体外離脱を経験するようになる。『夢で会える 体外離脱入門』(ハート出版)を2012年1月に出版。『ゼロの物語Ⅰ〜出会い〜』、『ゼロの物語Ⅱ〜7本の剣の守り手〜』、『ゼロの物語Ⅲ〜次元上昇〜』の3部作を、2013年7月〜12月にかけて、オフィスニグンニイバよりAmazonのKindleにて出版。現在も新たな物語を執筆中。

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