看板に偽りあり、かもね
新しい映画が公開されると、その原作本が書店に棚積みされることが多い。特に洋画の場合その傾向が強いように思う。人気俳優が主演する作品なら、当然ながら映画の写真を原作本の表紙にしたくなる。
出版社のそんな気持ちはわかるけれど、原作のファンとしては少し複雑な気分になる作品がある。
2021年 読書#109
『ネバー・ゴー・バック』上巻 リー・チャイルド著という小説。トム・クルーズが主演したことで知られている。『ジャック・リーチャー』シリーズの第18弾となる作品。『アウトロー』に次いで映画化された作品。ただし日本では出版済みの25作品のうち12作しか翻訳されていない。
この本の出版年を確認すると、映画の公開と同じ。それゆえこんなわかりやすい表紙になったのだろう。
ただし原作ファンの立場からすれば、これは『看板に偽りあり』ということになってしまう。なぜなら映画と原作のジャックは別人のようにキャラがちがうから。それゆえ映画のイメージでいきなりこの本を読んだ人は、原作のジャックに戸惑ってしまう可能性が高い。
ストーリーは基本的に映画と同じ。ある事件で世話になったジャックは、自分が過去に所属していた陸軍の同じ部署のリーダーに会いに来る。スーザン・ターナーという陸軍の女性将校。映画では世話になったという程度の理由。だけど原作のジャックはちょっとちがう。下心がありありだからwww
電話でしか話していないけれど、ジャックはスーザンに好意を持っていた。自分と同じ職務についているのも興味を持った理由。だからどうしても顔を見たくて会いに来た。
トム・クルーズ演じるジャックは、どちらかといえば硬派。敵を倒す能力は原作と同じだけれど、女性に対して身持ちが堅い。
ところが原作のジャックは自分でも口に出すほど女好き。身長も190センチほどの大男で、髪の色は金髪、ということでトム・クルーズとはまったくちがうキャラ。でもボクのように順に原作を読んでいると、原作のジャックのイメージが固まっている。だからこの本の表紙に違和感を覚えてしまう。
ただし映画も原作のジャックも、卓越した能力を持っている。それは観察力の鋭さ。相手のちょっとした動きや言動から、その人物の心理や次の行動を読み切ってしまう。やはり陸軍警察で捜査をしていただけのことがある。
この作品でもその能力が発揮される。スーザンに会いにいったのに、彼女は反逆罪で拘束されていた。すぐにそれが冤罪だと見抜いたジャック。ところが彼も過去の資料からいわれのない訴訟を起こされる。そのうえ過去に関係を持った女性に子供がいることで、その養育費の支払いまで要求される。
映画のジャックなら、隠し子なんて笑い飛ばせる。だけど原作のジャックはシャレにならない。女性関係がいろいろとありそうだから。とにかく拘留されたジャックが、得意の観察力を駆使してスーザンを助け出して逃走する。そして彼女が巻き込まれた反逆罪の真相を探ろうとする。上巻はここまで。
結末は映画でわかっているけれど、原作はどのようにしてそこへ至るのか楽しみ。とにかく隠し子疑惑がどうなるのか興味津々だよなぁwww
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