懐かしいゲームと同じパターン
『ポートピア連続殺人事件』というアドベンチャーゲームを知っているだろうか? 任天堂のファミコン世代の人ならおそらく懐かしく思ってくれるはず。
1985年にファミコン初のアドベンチャーゲームとしてリリースされ、多くの人が謎解きに挑戦した。ボクもそのひとり。タイトルからわかるように神戸を舞台にした物語となっている。
ある人物が神戸で殺される。そこで兵庫県警が動く。ボスに命令されたヤスという刑事が捜査にあたる。つまりゲームをやっている人は、ヤスの目線で証拠を集めたり推理をしていく。花隈、新開地、神戸港、そして淡路島等に行って証拠を集める。ある程度の証拠が集まると、次の証拠が見つかっていくというゲーム。
ところがこのゲームには、とんでもない大どんでん返しがプログラムされている。犯人を見つけた人は、大声で叫びつつもショックで脱力することになる。
まさにそれと同じパターンの筋書きになっている映画を観た。
2021年 映画#160
『砂上の法廷』(原題:The Whole Truth)という2016年のアメリカ映画。主人公のリチャードという弁護士を、写真のキアヌ・リーブスが演じている。典型的な裁判劇で、この作品もラストにどんでん返しが仕込まれている。
リチャードが世話になていた先輩弁護士のブーンが殺害される。容疑者として逮捕されたのはブーンの息子のマイク。幼いころからマイクを知っているリチャードはどうしても彼を有罪にしたくない。マイクの母親のロレッタからも、息子を救ってくれるよう懇願されていた。ちなみにこのロレッタをレネー・ゼルウィガーが演じている。
ところがマイクにとって不利な証拠しかない。証人の証言もそう。そのうえマイクは黙秘を貫いて、リチャードに何も話そうとしない。どう考えても敗訴しか見えてこない。そんな状況でリチャードは裁判の後半に向けて、次々と奇策を繰り出しくる。
殺されたブーンは悪評が尽きない。妻のロレッタをレイプ同然で犯したり、馬鹿呼ばわりしたりという証言が続く。陪審員としてはマイクが父親を殺したのはまちがいない。だけど母親を守るために仕方なかった、という空気になってきた。もちろんそれはリチャードの作戦でもある。
そして最終的に被告のマイクが証人となって法廷で質問を受けた。そのときマイクは初めて口を開く。そして12歳のころから父に性的暴力を受けていたことを告白する。大学に行けば寮に入れるけれど、それまでにもう一度襲ってやるといわれていた。それゆえ凶行に及ばざるを得なかった、という内容。
この証言を受けて、陪審員はマイクに対して無罪の評決を出した。だけでこの映画のどんでん返しはまだこれから。
最初の『ポートピア連続殺人事件』に戻ろう。この事件の犯人を聞いたら驚く。なんと被害者を殺したのは捜査をしていたヤスだった。ボクはゲームをしながらマジでショックだった。ヤスに感情移入して捜査をしていたのに、彼が犯人だったなんて。
つまりこの映画も同じ。真相を追求しようとしているリチャードが犯人だった。
ブーンの妻への暴行に耐えられなくなったリチャード。このままではロレッタは精神的に壊れてしまう。もしかしたらリチャードとロレッタには関係があったのかもしれない。とにかくブーンを殺したのはリチャードだった。
ところがマイクが父の遺体を発見したときは、母のロレッタが凶器を握りしめていた。それゆえ母を守るためマイクは出頭した。最終的に父に性的暴行を受けていたという嘘をつくことで、母も自分も守ろうとした。母が父に暴行を受けていたのは事実だから。
ところがマイクは弁護士志望だけあって、現場である時計を見つけていた。それはリチャードの腕時計だった。それゆえ裁判が結審したあと、マイクがリチャードに詰め寄る。「父を殺したのはあんただろう。あんたのせいで、俺は愛していた父を辱めることになった」と殴りかかってくる。
そこはさすがやり手弁護士のリチャード。マイクが検察に事実を告げても、誰も起訴されないように対応済みだった。とても後味の悪い作品だけれど、途中までキアヌ・リーブスを応援していた気持ちがぶっ飛ばされてしまう。それはそれで気持ちのいい作品だった。
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