お金で見る歴史的事件の真実
ボクは経理や財務の仕事が長かったので、金銭感覚を通じて物事を見る癖がついている。ある種の職業病のようなもの。
少し前の週に放送された大河ドラマの『青天を衝け』で、渋沢栄一が三井財閥の三野村利左衛門と語るシーンが印象に残っている。日本で銀行というものが認知されたことに喜びつつも、それまでの日本人になかった『金銭信仰』を危惧するという内容だった。
もしかしたらわたしたちは、開けてはいけない扉を開けてしまったのでは、と三野村利左衛門が苦い表情を見せて言った。江戸時代にも貨幣は存在していた。だけど明治になって、『お金』そのものを求める意識が根付いたことを表していたのだろう。それがいまになっても続いている。
江戸時代の武士にとって、金銭による損得を考えることは卑しいことだと考えられていた。武士は食わねど高楊枝、というのが美徳とされていた。それゆえ商売に関わる武士は軽蔑された。といっても江戸時代に藩を維持するために、経済感覚は欠かせない。だから武士でありながら、そうした仕事に邁進していた人たちがいたはず。
そんな武士たちが起こしたある大事件に関して、お金の観点から描いが映画を観た。
2021年 映画#166
『決算!忠臣蔵』という2019年の日本映画。コメディ作品として映画化されたもので、その元になったのは大石内蔵助が残していた討ち入りまでの決算書。この書類を研究した書籍が映画の構想となったとのこと。武士である大石内蔵助が、潜伏期間から討ち入りまでの金銭出入りを記録していたのはすごいことだと思う。
とにかく面白い映画だった。特にボクのような経理畑の人間には最高の作品だと思う。大石内蔵助を演じたのは堤真一さんで、さすがの演技で何度も笑わせられた。関西人のノリがわかる人は笑いが止まらないだろう。
そして赤穂藩の勘定方である矢頭長助を演じた岡村隆史さんも最高だった。赤穂藩の取り潰しが決まってから城の明け渡し、浪人となる藩士たちの退職金である割賦金、そして御家再興のための資金確保等、討ち入りまでの資金繰りだけでかなり笑えた。
最終的に御家再興が無理だとわかり、大石内蔵助は討ち入りを決意する。その段階ですでに使える金銭は有限だった。討ち入りが47人となったのは、江戸まで連れていける金銭が足りないという事情に思わず唸った。たしかに人間が旅をするには金が必要となる。主君の仇討ちといっても、無条件に元藩士を連れて行けないのが現実ということ。
さらに討ち入りの日の決定も、つい笑ってしまった。討ち入り日は浅野内匠頭の命日である3月14日というのが本意だった。だけど江戸に着いた11月ころの状況だと、とてもじゃないけれど3月まで金銭が持たない。討ち入りするには武器も必要となる。
ということで討ち入りは12月に前倒しとなった。事実かどうかは別にして、物語としては説得力がある。お金がもたない、というのはリアリティが高すぎるよね。映画は常に現在のお金に換算して説明されるので、とてもわかりやすかった。
映画が面白かったので、原作の元になった本が読みたくなった。大石内蔵助がどのような決算書を残したのが気になる。彼が潜伏していた京都の山科は、ボクが少年から青年時代を過ごした場所。山科の大石神社もよく知っている。気になるのでその本をチェックしてみようと思う。
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