ハリウッドに殺されたんだと思う
ボクはミュージカル映画が大好き。最近の作品ではレディー・ガガが主演した、『アリー/スター誕生』を何度も観てはボロボロ泣いている。
この作品は何度かリメイクされている物語で、最も有名なのは『スタア誕生』というジュディ・ガーランドが主演した作品。ボクは彼女の作品で、この物語を知った。何度も観たいと思う素晴らしい作品で、歌声と演技の素晴らしさに圧倒された。
そんなジュディの晩年を描いた伝記映画を観た。悲しくて切ない、だけど美しく感動的な物語だった。
2021年 映画#183
『ジュディ 虹の彼方に』(原題:Judy)という2019年のアメリカ・イギリス合作映画。ジュディを演じたレネー・ゼルウィガーがアカデミー主演女優賞を受賞した作品で、彼女のジュディをずっと観たいと思っていた。本当に素晴らしい演技で、多くの映画賞を総なめしたのは当然だと思う。
数々のトラブルを起こし、映画界から去ったジュディ。それでも歌唱力を買われて、ジャズ歌手としてニューヨーク等で活動をしていた。だけど生活は荒れ、多額の借金を抱えている。結婚と離婚を繰り返しながらも、幼い二人の子供と必死に暮らしていた1968年のジュディを描いた物語。
当時の夫であるシドニーとは離婚して、子供の親権を争っている。そこでロンドンなら彼女の人気は衰えていない。借金を返して子供たちと暮らすことを夢見て、ロンドンでの5週間にわたる公演を引き受ける。
アルコールと薬物中毒に苦しみ、ライブができるような状態ではなかった。だけどステージに立てば、観客を魅了する歌を聴かせる。手応えを感じつつも、やがて1年後の死へと向かっていく彼女の葛藤が切ない。
まだ新しい映画なので、あまりネタバレはしないでおこう。とにかくラストシーンにはハンカチがいるよ。ボクは顔が涙でぐちゃぐちゃになって大変だった。イメージとしては自堕落な生活で薬物死、あるいは自殺してしまったという印象だった。何度も自殺未遂をくり返していた人だから。
だけど娘のライザ・ミネリは、「母はハリウッドが大嫌いだった」「母を殺したのはハリウッドだ」と発言している。その真意をこの映画で理解したような気がした。ジュディ・ガーランドというアーティストは、ハリウッドに殺されたんだと思う。
少女時代からデビューしていたジュディ。まずはステージママの母親が毒親だった。この映画でも回想シーンで10代のジュディの悲惨な様子が登場する。さらに当時のハリウッドは搾取傾向が強く、1日18時間も10代の俳優を働かせていた。普通の人間だったら壊れてしまう。
さらに恐ろしいことがある。映画ではボカされていたけれど、調べてみてわかった。ジュディは太りやすい体質だったらしく、映画会社からダイエットすることを厳命されていた。そのためにセットのハンバーガーさえ口にできない。そしてその当時、痩せ薬として使われていたものがあった。
それはアンフェタミン、いわゆる覚醒剤。彼女はその当時、映画会社によってこの薬を常用させられていた。ジュディを薬物中毒に追いやったきっかけは、ハリウッドだったということ。ライザ・ミネリはこのことを指摘したんだと思う。
本当に素晴らしい映画だった。レネー・ゼルウィガーに心からの拍手を送りたい。そして久しぶりに『オズの魔法使い』が観たくなった。だけどあのドロシーが覚醒剤で働かされていたなんて、ショック過ぎて正視できないかもしれない。
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