高羽そらさんインタビュー

忘却は思い出したくないから

人間の記憶は不思議で、子供時代のどうでもいいような出来事を明確に記憶していたりする。そうかと思えば、人生に大きな影響を及ぼす出来事なのに完全に忘却していることもある。あるいはまったく別の記憶に置き換えたり、捏造していたり。

 

記憶から消えてしまう理由は二つあると思う。ひとつは本当にどうでもいいようなこと。関心がなかったことだから。

 

もう一つは少し深刻。それは二度と思い出したくないことだから。その記憶は消えたわけじゃなく、顕在意識に浮かび上がるのを抑えつけられているだけ。

 

そんな封印した記憶を、チクチクと刺激される主人公の物語を読んだ。

 

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2021年 読書#128

『笹の舟で海をわたる』角田光代 著という小説。大きなドラマがあるわけじゃないけれど、不思議に惹きつけられてしまう物語だった。主人公は戦争中に疎開を経験した佐織という女性。戦後10年経った22歳のある日、銀座で風美子という女性に声をかけられる。

 

疎開時代にとなりのクラスにいた女性で、佐織に優しくされたことを覚えていた。それで偶然見かけて声をかけたとのこと。だけど佐織は疎開時代のことをあまり覚えていない。風美子のことも思い出せない。だけど共通している事実があったことで、交友関係が始まる。

 

結果として風美子とは義理の姉妹となる。佐織が結婚したことで、風美子は夫の弟と結婚したから。そんな時代から二人が高齢者となるまでの物語。佐織は風美子との関係が深くなることで、少しずつ疎開時代のことを思い出していく。

 

風美子は疎開先でひどいイジメを受けていた。それを助けてくれたのが佐織らしい。だけど彼女にはその記憶がない。やがて風美子は疎開時代に自分をいじめてきた女性に対して復讐のようなことをほのめかすようになった。料理研究家として成功した風美子は、マスコミの寵児となった。

 

だからそんな名声に引き寄せられて、過去に彼女をいじめた人物が近寄ってくる。まるでいじめなどなかったかのように。その都度、風美子はそういう人物より自分が優位に立っていることを佐織に自慢する。まるで復讐のように。

 

やがて佐織もいじめに加担していた過去を思い出す。もしかしたら自分は風美子を助けたのではなく、いじめた人間なのではないだろうか? 復讐するために偶然を装って近づき、義理の姉妹となって人生に関与しているのでは? という不安と疑問を抱くようになる。

 

その証拠に、長女の百々子は実の母の佐織を徹底的に嫌い、いつも風美子の家に居着くようになった。成人してもその確執は消えず、佐織は娘の百々子がまるで風美子に奪われたような気分になった。さらに仲の良かった長男の柊平がゲイだと知って当惑する。

 

結果として二人の子供とも縁遠くなり、夫も死んだことで佐織は孤独になってしまう。風美子は一緒に暮らそうというけれど、それを押し切って佐織は老人保養施設を兼ねたマンションを購入してしまう。なんとも寂しい生き方だった。

 

結局、佐織の心は疎開時代に囚われていたということなんだろう。そのときのことを常にひきずった人生だった。だけど記憶から消していることで自覚がない。それゆえ世界がどんどん変わっていくのに、佐織の心は戦時中のままで時代の変化に対応できなかったのかも。

 

だから娘の生き方も、息子の人生も理解できなかったのだろう。そんな囚われに気づかせてくれたのが風美子なのかもしれないなぁ。とにかく主人公のメンヘラぶりにイライラしながらも、最後まで引き込まれていく物語だった。

 

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高羽そら|たかはそら(作家、小説家)プロフィール

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高羽そら(たかはそら)
今後の目標:毎年1つの物語を完成させたいと思います。
生年月日:昭和37年5月10日
血液型:A型
出身地:京都市

【経歴】
1962年京都市生まれ。数年前に生活の拠点を神戸に移してから、体外離脱を経験するようになる。『夢で会える 体外離脱入門』(ハート出版)を2012年1月に出版。『ゼロの物語Ⅰ〜出会い〜』、『ゼロの物語Ⅱ〜7本の剣の守り手〜』、『ゼロの物語Ⅲ〜次元上昇〜』の3部作を、2013年7月〜12月にかけて、オフィスニグンニイバよりAmazonのKindleにて出版。現在も新たな物語を執筆中。

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