今だから感動するロックオペラ
ボクが洋楽に目覚めたのは、小学生のときにビートルズの『レット・イット・ビー』と出会ったから。それでも歌謡曲全盛時代なので、学校ではテレビに出演しているアイドル歌手の話題が中心だった。
本格的に洋楽を聴くようになったのは中学生になってから。カーペンターズのカレンの声に感動して、オリビア・ニュートン=ジョンの女神のような姿に心奪われた。そしてボクに洋楽を教えてくれた元ビートルズのポール・マッカートニーも、ウイングスというバンドを率いて第一線で活躍していた。
その後クイーン、キッス、エアロスミスというハードロックと出会い、ボクもギターを持ってバンドを組むようになった。そんな中学2年生のころ、ある映画が公開された。その名もロックオペラの『トミー』という作品。
ザ・フーという有名なロックバンドがいる。彼らがレコードで発表したロックオペラの『トミー』というアルバムを映画化した作品。ロックオペラというのは言葉のまま。今風に言えばコンセプトアルバムかな? アルバムの曲の全てが関連性を持っていて、ひとつの物語として収録されている。
ピンクフロイドの『ザ・ウォール』という作品もロックオペラと言っていいだろう。とにかくロックに熱狂したてのボクは、もちろん映画館に行った。そして二度も観た。その『トミー』がデジタルリマスターで公開されていたので、久しぶりにロックオペラを堪能した。
2021年 映画#191
『トミー』(原題:Tommy)という1975年のイギリス映画。日本で公開されたのは1976年なので、ボクが中学校2年生のとき。
実は当時のボクは、ザ・フーというバンドは名前しか知らなかった。なのにこの映画を観たのは、エリック・クラプトン、エルトン・ジョン等の著名ミュージシャンが出演していたから。当時はビデオもDVDもない時代。だから映像でエリック・クラプトンやエルトン・ジョンを見られるなんてレアな体験だったからね。
ところがまったくわけがわからない。中学生のボクにはこの作品の意図や芸術性が理解できない。単なるロックオタクのギター小僧でしかなかったから。2回も観た理由はよく理解できなかっただけのこと。でも2回見てもわからんかったwww
だから覚えているのは神父姿のエリック・クラプトン、謎のジプシー女のティナ・ターナー、ピンボールの魔術師であるエルトン・ジョンの姿だけ。マジで恥ずかしい限り。だけど成人してからDVDを見直して、ようやくこの映画の魅力を理解できた。
今回久しぶりに観たけれど、さらにこの映画の良さがわかったような気がする。主人公のトミーを演じているのはザ・フーのヴォーカリストであるロジャー・ダルトリー。ギタリストのピート・タウンゼントも、演奏シーンでは見事なギタープレイを見せてくれる。
もちろんドラマーのキース・ムーンも、クレイジーなトミーの叔父役で登場していた。ザ・フーというバンドは、ステージでドラムセットを壊したり、ギターを破壊するというパフォーマンスのパイオニアだからね。だからクレイジーな雰囲気がよく似合う。ちなみにキースは1978年に亡くなってしまったけれど。
とにかくみんな若い。エリック・クラプトンなんていまの姿が焼き付いているから他人のよう。エルトン・ジョンはファンキーなメガネでわかるけれどね。そして若いころのロジャー・ダルトリーはマジでハンサム。どことなくトム・クルーズと雰囲気が似ているよね。
ストーリーはシンプル。トミーの父親は第二次世界大戦でパイロットだった。戦死したと思い込んだトミーの母は、ある男性と再婚してしまう。ところが父親は生きていた。それでトラブルとなって、再婚相手の義父がトミーの父親を殺してしまう。その現場を目撃した幼いトミーは、目が見えず、耳が聞こえず、話せなくなってしまう。心を閉ざしてしまったから。
だけど成人してピンボールと出会うことで、世界チャンピオンまで昇り詰めて大金持ちになる。やがて彼を信仰する人たちが集まって、キリストのように崇められる。ところが幻想から目覚めた人たちが暴動を起こし、両親は殺されてしまう。自由になったトミーは、一人広い世界に羽ばたいていくという物語。
全体に観念的で抽象的な物語で、中学生に理解できなくても仕方ない。今だからこそトミーの心の抑圧と、そこからの解放というテーマを感じ取れる。音楽も本当にいい。まだロックオペラを体験したことのないロック好きな人は、一度は『トミー』の世界に触れてみるべきかも。
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