カラシニコフの誕生秘話
『カラシニコフ』という言葉を聞いたことがあるだろうか? よく映画を観る人なら、ギャングやテロリストがこの言葉を口にしているのを聞いたことがあるはず。ロシア、実際にはソ連製自動小銃の愛称で、正式名称はAK-47と呼ばれている。
この銃を発明した人物がカラシニコフという名前なので、そう呼ばれるようになったらしい。ボクがこれまで何度も耳にしてきた『カラシニコフ』という名の自動小銃。それがどのような経緯で量産されていったかをテーマにした映画を観た。
2022年 映画#24
『AK-47 最強の銃 誕生の秘密』(原題:Kalashnikov)という2020年のロシア映画。青年の挫折と成功を描いた作品で、サクセスストーリーとして観ることのできる作品だった。ただ主人公が作っているのは戦争のための武器。そう考えると、少し複雑な気分になってしまう。
主人公の名前はミハイル・カラシニコフ。田舎の農家の息子だったミハイルは、幼いころから機械工作に異常な関心を持っていた。特に銃に興味があって、子供なのに親に内緒で自家製の散弾銃を作ったりしていた。
ナチスドイツとの戦争が始まり、ミハイルは兵役を果たすべく入隊する。前線で戦車に乗っていたが、ドイツ軍に攻撃されで腕を負傷する。医師の診断によると、前線で戦うための許可が出ない。ドイツ軍の最新兵器を前線で見たミハイルは、このままではドイツに負けてしまうと考えた。
ここから彼の努力が始まる。負傷で実家に戻る途中、以前世話になっていた工場を訪ねる。すでにスケッチが書けていて、ドイツに勝てる銃を作りたいと責任者に申し入れる。最初は無視され続けるけれど、職人たちの支持を得たミハイルは試作品を完成させる。
それを見たソ連軍の幹部が驚いた。それでミハイルは本格的な研究機関へ配属される。ところがそう簡単にはいかない。挫折、挫折の連続。満足に学校にも通っていないミハイルは、製図さえ書けない。機械工の技術があるわけでもない。ただ頭に浮かんだイメージとしての草案があるだけ。
そんなとき出会ったのがエカテリーナという女性技師。彼女がミハイルのイメージ通りに製図を描いてくれたことで、軍が主催するコンテストに出品できるところまでこぎつける。それでもまた不合格となってしまう。とにかく挫折の連続。
やがて終戦を迎えてしまう。結局、彼の銃はソ連軍に採用されることがなかった。ところが時代はアメリカとの冷戦となっていく。それゆえソ連軍はさらなる武器の開発を求めた。ということで戦後になってから、ようやく彼はコンテストで優勝する。それがAK-47だった。
とまぁ、こんな感じのストーリー。ミハイルの動機は、打倒ドイツに貢献すること。だから彼が武器を発明したことへの非難は的外れだと思う。この時代の青年は、祖国のために必死で戦っていた。自分なりに貢献したいと思うのは自然なことだと思う。
ただあまりに素晴らしい自動小銃を発明してしまったことで、世界中が『カラシニコフ』と求めるという結果になってしまった。おそらくソ連が崩壊したことも大きいと思う。あの崩壊当時、ソ連軍の武器がテロリスト等に売り捌かれたりしているから。そのことについて、彼がどう思ったのかはわからないけれど。
残念ながら映画としての盛り上がりには欠ける作品だった。なぜなら彼が成功したのは戦後だったから。だらこそまさに『カラシニコフ』の製造秘話という真摯な内容の作品だった。
実際のミハイルは2013年に94歳で亡くなっている。晩年にはテロリズムのない世界を望んでいたとのことなので、自分の発明に関していろいろと想うことがあったんだろうなぁ。
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